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2018年

既婚と知らずに交際 慰謝料は必要か-故意か過失かで結論異なる-

 神戸新聞2018年4月18日掲載
執筆者:田渕 仁士弁護士

 私が付き合っていた男性の妻という方から突然、慰謝料請求の書面が届きました。私は、男性は独身と聞いており、真面目にお付き合いをしていましたが、慰謝料を支払わなければならないのでしょうか。

 相談者が男性の妻から請求された慰謝料の根拠は、不法行為に基づく損害賠償請求(民法709条)と呼ばれるものです。この請求が認められるには、相談者が男性の妻の①「権利または法律上保護された利益」を、②「故意または過失」によって侵害したことが要件となるため、今回はこの2点が認められるかどうかがポイントになります。

 まず、今回の事案で、①「権利または法律上保護された利益」とは判例上、婚姻関係にある夫婦が婚姻生活を平穏に維持する利益とされています。例えば、配偶者のいる人と交際して肉体関係に及ぶなど、婚姻関係を破綻させる恐れのある交流・接触行為は不貞行為と呼ばれ、婚姻生活を平穏に維持する利益を侵害行為の典型です。

 ただし、不貞行為の時点で既に婚姻関係が破綻していた場合には、そもそも婚姻生活を平穏に維持する利益がないため、不法行為は成立しないと考えられています。

 今回のケースでは、相談者が男性と肉体関係など婚姻関係を破綻させる恐れのある交流・接触関係を持ち、その時期に男性と妻の婚姻関係が破綻していなければ、男性の妻の①「権利または法律上保護された利益」を侵害したと言えです。

 次に、②「故意または過失」ですが、不貞行為の時に相手に配偶者がいることを知っていたか、不注意で知らなかったかどうかということです。今回の場合、相談者は男性が独身と聞いていたとのことで、「故意」はなかったと言えるでしょう。

 しかし、相談者が配偶者の存在を知りうる状況であったにも関わらず、不注意で知らなかった場合には、「過失」が認められ、慰謝料を支払わなければならない可能性があります。 このようなことから、相談者は慰謝料を支払わなければならない可能性がありますが、具体的な事実関係によって結論は異なります。詳しくは弁護士らお近くの専門家に相談することをお勧めします。

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