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2019年

成人した知的障害の娘に養育費は必要?-独力で生計維持可能かで判断-

 神戸新聞2019年1月9日掲載
執筆者:植田 浩平弁護士

 離婚した妻との間に、もうすぐ20歳になる娘がいます。娘には知的障害があり、妻からは「働けないので、今後も養育費を」と言われています。これまでと同額の養育費を支払わないといけないのでしょうか。

 まず、親が未成熟の子を養育することについて、民法は親権者であるか否かにかかわらず、父母には子の扶養義務があると定めています。

 その扶養義務には大まかに分けて二種類あります。①生活の基礎を共通とする場合に、互いに相手の生活を自分の生活の一部として維持しようとする「生活保持義務」②最低限の生活を維持するのに事欠く場合に、これを補充する「生活扶助義務」です。

 実際には、親の未成熟子に対する扶養義務は①の「生活保持義務」とされており、子の養育費の金額は、扶養者と被扶養者が同等の生活水準を保つことができるように算定されます。これは共同親権であるか単独親権であるかを問いません。

 次に成年に達した子についてですが、成年に達した子は基本的には自助の原則が当てはまると解釈されますから、親子間の扶養義務は「生活保持義務」ではなく、「生活扶助義務」として考えられます。もっとも、成年に達した子であっても、独力で生計を維持できない「未成熟子」の場合は、父母は子に対して「生活保持義務」があることになります。

 今回の事例は、子に知的障害があって働けないとのことですが、障害の程度は人によって差があり、知的障害があるというだけで独カで生計を維持できない状態(=末成熟子)とはなりません。子の知的障害の程度や実際に仕事をした場合の能力などを考慮して、末成熟子と言えるのかどうかを検討しないといけません。

 その上で、未成熟子と判断された場合には、父は「生活保持義務」を負いますから、特段の事情がない限り、これまでと同等の養育費を負担することになります。

 一方、未成熟子と言えない場合、父は「生活扶助義務」を負うにとどまります。このため、保護者である元妻の収入で子の生活費を賄いきれないのか、また、そうだとすればどの程度不足しているのかを具体的に見極める必要があります。

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