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2022年

交通事故の加害者が破産 愛車の修理代請求できるか-物損への賠償請求できず

 神戸新聞2022年3月16日掲載
執筆者:三木田 直哉 弁護士

 交通事故に遭い愛車が損傷しました。 加害者に修理代を請求しているのですが、先日、弁護士から加害者は破産予定であるとの連絡が来ました。破産となった場合、損害賠償を請求できないのでしょうか。

 加害者が破産した場合、交通事故による損害賠償を請求できるか否かは、車の修理代など物損に対する損害賠償を請求する場合と、治療費や慰謝料など人身に対する損害賠償を請求する場合とに分けて考える必要があります。結論から言うと、物損へは請求はできませんが、人身に対してはケースによって可能なこともあります。

 破産の手続きが開始され、免責の許可の決定が確定すると、破産者は借金や損害賠償などの支払いをしなくてよくなります。もっとも一部例外があり、例えば養育費や税金などは免責の許可の決定が確定したとしても支払わなければなりません。

 破産法は「破産者が故意又は重大な過失により加えた人の生命又は身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権」についても、破産者は支払い義務を免れないと定めています(破産法253条1項3号)。

 つまり、交通事故によるけがが、加害者の重大な過失により生じた場合は、加害者が破産をしても、加害者に対して請求することができます。もっとも、重大な過失に当たるかどうかは、交通事故の状況によってさまざまです。例えば、飲酒運転をする加害者に追突されてけがを負ったという場合であれば、重大な過失と認められ、加害者が破産をしたとしても、請求が認められる可能性は高いでしょう。一方で、被害者にも過失があり、加害者だけが悪いわけではないというときには、人身に対する損害賠償であっても、破産をした加害者には請求できない可能性が高いです。

 どのような交通事故であれば重大な過失に当たるのかについては、明確な基準があるわけではなく、個別の事情から判断する必要があります。あくまで、重大な過失に当たる場合に損害賠償請求ができるのは、人身に対するものに限られます。重大な過失による交通事故であっても、加害者が破産をしてしまっては、愛車の修理代を請求することはできなくなります。

 なお、相手方が任意保険に加入していた場合には任意保険会社が賠償金を支払うこともあり得るので弁護士にご相談ください。

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