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2023年

世話になった長女 多めに遺産残したい - 具体的かつ配慮した遺言を

 神戸新聞2023年12月20日掲載
執筆者:兵庫県弁護士会広報委員会

 80歳の男性です。同居する妻と長女のほかに、長男がおり、世話になった長女に多めに財産を、と思っています。兄妹でもめないよう、遺言を書くのが良いと聞きますが、どんな点に気を付ければいいでしょうか。

 遺言を書いたからといって相続に関する争いの全てを防げるわけではありませんが、少なくとも大枠を決めることができますので、相続争いのかなりの部分を避けることができます。

 遺言書には自筆証書遺言、公正証書遺言などがあります。自筆証書遺言は、遺言者がご自身で書く遺言で、一人で作成できますが、形式不備や文章の意味が明らかでないなどで無効になることもよくあります。公正証書遺言とは公証人に遺言の内容を説明して作成してもらう遺言です。自筆証書遺言に比べ、無効になる恐れが小さく、手間や費用を考えても公正証書違言を選択することをお動めします。

 遺言の内容にも注意が必要です。遺言で相続の割合(例えば、長女に2分の1、妻と長男に4分の1など)だけを示していた場合には、具体的にどの財産を誰に相続させるかが不明なため、どのように分けるかで争いが生じることがあります。そのため、どの遺産を誰に相続させるのかを具体的に示す方が良いでしょう。

 また、遺言に記載されていない遺産が判明した場合は争いの種になりかねません。そのため、できるだけ全ての遺産をそれぞれ特定できるように具体的、かつ、漏れがないよう示すのが望ましいですし、そこに記載のない財産をどう分けるかを示しておくことも良いでしょう。

 同居されている長女に長男よりも多く相続させたいとのことですが、法律上「遺留分」といって、各相続人に最低限残さなければならない割合があります。例えば、全財産を長女に相続させるような遺言を残すと、長男が納得しなかった場合には、長男は長女に対し、遺留分侵害の限度で遺産の返還を請求することができてしまいます。

 そこで、明らかな正解がある問題ではないのですが、遺言の時点で長男の遺留分を侵害するような内容にならないように配分することは、争いとなるリスクを減らせると思われます。

 ご意向に即した遺言を作成するために、弁護士に相談されることをお勧めします。

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