くらしの法律相談(2017年~)

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2023年

兄弟が反対の大規模葬儀費用は誰が支払う?-相続人の合意なければ喪主

 神戸新聞2023年4月19日掲載
執筆者:平松 賢 弁護士

 会社を経営していた父が亡くなりました。会社の後継者でもあるので、喪主として大きな葬儀を、と思っています。他の兄弟が反対する中、大きな葬儀をあげた場合、私が費用を全額負担せねばならないのでしょうか。

 葬儀費用は亡くなった方の財産から支払われると考えている方が多いかもしれません。しかし、亡くなった方の財産である相続財産は、亡くなった方の死亡時点における権利義務をいいます。これに対して葬儀費用は、死亡後に発生するものですので、相続財産には含まれません。このため、葬儀費用を当然のように相続財産から支払うことはできません。

 葬儀費用の支払い義務は、葬儀社(葬儀費用の請求者)と契約を交わした喪主(喪主を務める人について法律上の定めはないが、慣習的には、故人の配偶者、子どもなどが務めることが多い)との間で発生するものです。このため、契約を交わした喪主が法律上の支払い義務を負うことになります。

 とはいえ、これらの結論は、葬儀費用を相続財産から支出してはいけないということを意味するわけではありません。相続人全員が合意すれば、相続財産から支出しても問題はありません。

 しかし、葬儀の規模について相続人の間で意見が食い違っているような場合は、葬儀費用を相続財産から支出することについて相続人全員で合意ができません。このため、ご質問の場合、喪主である相談者が葬儀会社に対して葬儀費用全額を支払わなければなりませんし、その一部を他の兄弟に請求することもできないことになります。

 このような結論は、葬儀会社との打ち合わせ、参列者へのあいさつなどの負担を強いられた喪主としては納得できないかもしれません。実際に葬儀費用が原因で相続人の間で大きなトラブルに発展し、骨肉の争いになることがあります。このようなトラブルを避けるため、終活として、遺言などであらかじめ自らの葬儀費用の額などを確定させておくことが重要です。

 また、ご両親が認知症で葬儀について決められないような場合、相続人予定者で協議し、葬儀費用の負担や額についての合意をしておきましょう。

この記事をSNSでシェアする