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2019年

妻と離婚、養子縁組した子の養育費必要か-縁組解消しない限り扶養義務-

 神戸新聞2019年2月6日掲載
執筆者:金井 周一郎弁護士

 私は妻と再婚し、妻の前夫との末成年の子どもと普通養子縁組をしました。今回、妻と離婚することになったのですが今後、子どもに養育費を払う必要はありますか。支払わないためには手続きが必要でしょうか。

 未成年の子と普通養子縁組をした場合、養子は縁組の日から養親の嫡出子の身分を取得し(民法第809条)、養親と養子は互いに扶養義務を負うことになります(民法第877条第1項)。したがって、このケースでは夫は子どもに対して扶養義務を負うことになります。

 そして、夫は妻と離婚しても、養子縁組が解消されることはありません。子どもが末成年のまま、夫が妻と離婚する場合、子どもの親権者とならなかったにしても、夫と子どもとの間にある養親子関係は解消されません。夫の子どもへの扶養義務は残り、離婚後も子どもに養育費を支払う必要があります。

 養育費の支払い義務を免れるには、子どもとの養子縁組を解消する必要があります。その手続きとしては、①協議離縁と②裁判上の離縁とがあります。離縁の当事者は、15歳以上の養子の場合は養親と養子の間、15歳未満の養子の場合は養親と養子の離縁後の親権者との間で行います。協議離縁は、当事者双方が離縁をする意志をもって合意するとともに、戸籍法の定めに従って届け出をすることで成立します。しかし、協議ができなかったり、調わなかったりしたときは、当事者双方はどちらからでも調停の申し立てができます。

 調停が成立することで離縁の効力が生じますし、調停が成立しない場合でも、家庭裁判所が相当と認めるときは調停に代わる審判をすることができ、審判が確定すれば離縁の効果が生じます。

 また、訴えを提起しようとする場合でも、まず家庭裁判所に家事詞停の申し立てをする必要がありますのでご注意ください。

 離縁の訴えを提起する場合は、裁判上の離縁原因(①ほかの一方から悪意で遺棄されたとき②ほかの一方の生死が3年以上明らかでないとき③その他、縁組を継続しがたい重大な理由があるとき)-が必要となります。

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