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2019年

新車で事故被害、相手に評価損の請求はできるか-算定方法など判断分かれる-

 神戸新聞2019年11月20日掲載
執筆者:山本 優子弁護士

 先日、購入したばかりの新車で交通事故の被害に遭い、修理をしました。知人から相手の方に対し車の評価損(格落ち) について請求ができるのではないかと聞きました。賠償を求めることはできますか。

 新車を購入したばかりということであれば評価損について賠償が認められる可能性があります。評価損とは、交通事故によって車に損傷が生じて修理した場合に生じる事故当時の車の価格と、修理後の車の価格との差額をいいます。

 評価損は、①技術上の限界から、修理しても事故の前の状態に戻すことができず、車の機能や外観に欠陥が生じて車の価値が減少してしまう、②修理により車の機能や外観は修復できたが、事故歴、修理歴があるため車の価値が減少してしまう-の二つのケースが考えられます。評価損として賠償請求が認められるかについては明確な基準がなく、特に②の場合は裁判所の判断も分かれています。修理によって車の機能、外観ともに事故前の状態に完全に戻ったとしても、事故歴、修理歴があることで車の下取り価格が低くなるのは一般的なことと思われますが、必ずしも損害として認められるとは限らないのです。   

 通常、外国車や国産高級車、人気車種で、初年度登録から数年程度しか経ていない場合は、評価損が認められやすい傾向にありますが、その場合でも、走行距離が長ければ認められにくいといわれています。相談者の方は、新車を購入ばかりで事故に遭ったとのことですので、その点では、評価損が認められやすいといえるでしょう。

 評価損が認められる場合でも、算定方法について判断が分かれ、事故当時の車両時価と修理後の車両価値との差額を損害とするもの▽事故当時の車両時価を基準として、その時価の何%かを損害とするもの▽車両の種類、使用期間、被害の内容・程度、修理費用などを総合して考慮し金額を決めるもの▽修理費を基準としてその何%かを損害とするもの-があります。

 評価損が認められるかどうかや、認められる場合の金額についてはいろいろ難しい問題がありますので、一度専門家に相談することをお勧めします。

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