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2022年

パック旅行キャンセル料業者から請求された-申込金支払い時に契約成立

 神戸新聞2022年11月16日掲載
執筆者:西谷 剛 弁護士

 電話でパック旅行を申し込みました。 申込書も申込金の支払いもないうちに1週間が経過し、私の都合でキャンセルしました。その後、旅行業者からキャンセル料を請求されたのですが、支払わなければならないのでしょうか?

 これは、旅行契約がどの時点で成立するのかという問題です。

 民法では、契約は、原則として当事者双方が合意した(口頭でも可)時に成立します。そうすると、今回の場合も、電話でパック旅行の申し込みをした段階で旅行契約が成立していたとなりそうです。

 もっとも、旅行契約に関しては、約款でこの原則が修正されています。どのように修正されているかというと、パック旅行(募集型企画旅行契約)を申し込むには申込書の記入・提出とともに申込金の支払いが必要とされ(募集型約款5条1項)、それとともに申込金の受理が必要とされています(同約款8条1項)。

 このように民法の原則が修正されている理由は、旅行は高額な上、物品のように目に見えるものではなく、しかも出発のかなり前の時点で申し込む必要があるため、旅行の申し込みの確定的な意思表示があったのは、申込金を支払ったときと考えるからです。

 もっとも、現実にはクレジットカード決済をされる方が多いと思います。この場合は注意が必要で、申込者がクレジットカードの会員番号などの必要事項を旅行業者に通知して申し込みをすれば、申込金の提出がなくとも旅行業者が承諾することで旅行契約が成立します(同法5条2項、同法8条2項)。したがって、この場合には、キャンセル料がかかってしまいます。

 この相談者の方も、クレジットカード決済であって、電話で申し込みをした際にクレジットカードの会員番号などを伝えていたのでなければ、契約は成立しておらずキャンセル料を支払わなくてよいことになります。

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