神戸新聞2026年5月6日掲載
執筆者:中島 英里 弁護士
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私は長年認知症の母を介護しています。妹は全く協力してくれません。母の相続について、母はすでに遺言を作成できる状態ではありません。このまま母が亡くなった場合、私と妹の相続分は同じなのでしょうか。
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献身的に被相続人の介護をした相続人と全く介護をしなかった相続人の相続分を同じとした場合、公平性を欠くことがあります。そこで民法は、相続人が療養看護などにより被相続人の財産の維持または増加について特別の寄与をしたと認められる場合には、その相続人の相続分に寄与分を加算する旨を定めています。
寄与分について、相続人間の協議により解決することが望ましいですが、裁判外で協議が調わない場合には、家庭裁判所において調停・審判を申し立てます。
一般的に「寄与」とは貢献することなどを意味しますが、民法上の「寄与」が認められるためには、相続人が療養看護などをしたということだけでなく、それにより本来かかるはずであった介護施設費や介護サービス費などの出費を免れ、被相続人の財産が減少しなかったという一連の経過を証明する必要があります。
また、加算される寄与分は、寄与の時期、方法および程度、相続財産の額など、諸般の事情を踏まえた上で、出費を免れた費用を基準として決められます。本件において、相談者が、寄与分を主張する可能性がある場合には、協議または審判において右記の事項を証明するため、資料を残しておくほうがいいでしょう。
具体的には、介護の必要性や介護していたことを証明する資料として、お母さまの診断書、医療記録、介護日誌およびヘルパーとのメールのやり取りなどが挙げられます。相談者が介護したことにより介護費用などを支払わずに済み、結果としてお母さまの財産が減少しなかったことを証明する資料として、お母さまの家計簿、領収証など、および仮に介護サービスや介護施設を利用した場合の見積書などが挙げられます。
相談者が、お母さまに関する費用を支払っている場合には、相談者自身の支払いとはっきり区別した方が後から説明しやすいでしょう。そのため、お母さまに関する支払いについては、事前に専用のクレジットカードや支払口座を用意したり、相談者の口座から支出した場合には通帳に使途などを記録したりすることをお勧めします。

