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2019年

被害者参加制度 具体的に何ができる?-証人や被告人に直接質問-

 神戸新聞2019年6月19日掲載
執筆者:垣田 重樹弁護士

 6歳の息子が交通事故に遭い足の骨を折る重傷を負いました。担当検察官から、ドライバーが自動車運転過失致傷罪で起訴され、被害者として刑事裁判に参加できると聞きましたが、具体的に何ができますか。

 被害者参加制度では、一定の重大な事件について被害者やその近しい家族(被害者が死亡した場合もしくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族もしくは兄弟姉妹)が、法廷に出廷し、証人や被告人に直接質問ができます。本件の過失運転致傷罪もその対象となります。

 具体的にはまず、公判期日に出席できます(刑訴法316条の34) 。傍聴席からではなく、検察官席の隣などに着席し、裁判の成り行きを見守ることが可能です。また、検察官の権限行使に関して、意見を述べ、説明を受けることができます(刑訴法316条の35)。

 つまり公判期日に先立ち、検察官と打ち合わせをして、その中で検察官に疑問に思ったことを聞き、説明を受けることができます。

 また、裁判所が相当と判断した際には情状証人や被告人に直接尋問や質問をすることができます(刑訴法316条の36、37) 。つまり被害者は被告人や情状証人に対し、知りたいこと、聞きたいことを直接聞くことができます。ただし証人尋問については犯罪事実に関する質問は許されていません。質問できるのはあくまで情状に関する証人の供述の証明力を争うために必要な事項についてのみです。

 被害者は、いま置かれている状況や、苦しい胸の内などを自分の口で被害者の意見として伝えることができ(刑訴法292条の2)、同意見は被告人の量刑を決める上で情状証拠となります。

 さらに裁判所が相当と判断した場合には証拠調べが終わった後、事実または法律の適用について、法廷で意見を述べることもできます(刑訴法316条の38)。

 つまり、被害者の立場から量刑などについても意見を言うことができます。被害者参加制度は、弁護士(被害者参加弁護士)に委任することもできます。経済的に被害者参加弁護士を頼むことが難しい場合には、国選被害者参加弁護士制度も設けられていますので、一度ご相談ください。

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