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任意保険に入っていない車に追突され、けが-自賠責保険会社に直接請求を-

 神戸新聞2020年5月20日掲載
執筆者:江島 加代弁護士

 数日前、車を運転中に後続車に追突され、頸椎捻挫と診断されました。損害を賠償してほしいと考えていますが、相手方は任意保険には入っていないようです。今後どうすればよいでしょうか。

加害者に対しては、けがの治療費や慰謝料など人的損害、車の修理費用など物的損害の賠償を求めることが考えられます。今回、加害者は任意保険に加入していないとのことですが、自動車損害賠償責任保険(自賠責保険)に加入している可能性があります。

 自賠責保険とは、自動車を使用する際に契約が義務付けられている自動車保険です。加害者が自賠責保険に加入している場合、被害者は加害者が加入する自賠責保険会社に対し人的損害について直接保険金を請求すること(被害者請求)ができます。加害者の自賠責保険会社の情報は交通事故証明書に記載されています。交通事故証明書は自動車安全運転センターで取り付けできます。

 ただ、自賠責保険は被害者に対する最低限度の救済を目的としていることから、支払われる保険金には限度額が決められています。また、自賠責保険では車の修理費用といった物的損害までは支払われません。

 そのため、自賠責保険だけでは足りない場合や物的損害についても支払いを求める場合には、加害者本人に請求することになります。

 加害者としても金額の折り合いがつかない場合や、加害者がきちんと話し合いに応じない場合には、弁護士会が運営する紛争解決センターや裁判所の調停手続きなどを利用して、中立の立場の第三者を交えて加害者と話し合いをする方法が考えられます。

 それでもなお金額に折り合いがつかない、あるいは加害者が支払いを拒んでいるようならば、訴訟をして強制執行によりお金を回収していくことになります。

 なお、加害者に請求する場合、加害者に支払い能力(資力)がなければ、お金を回収することはできません。

 そのため、相談者(被害者)が人身傷害保険や車両保険に入っている場合には、ご自身で加入している保険会社から保険金の支払いを受けることも選択の一つです。

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