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2022年

取り決めていない養育費、払ってもらうには-さかのぼって請求は難しい

 神戸新聞2022年5月18日掲載
執筆者:中田 篤志 弁護士

 離婚の際に、子の養育費について取り決めをせず現時点で支払ってもらっていません。養育費はどのように計算し、いつから支払ってもらえるのですか。話し合いで解決しない場合にはどうすればよいですか。

 養育費とは、親には未成熟の子どもの生活費・教育費などを負担する義務があることを前提に、子どもを見守り育てる(監護する) 親に対し、監護しない親が支払う金銭をいいます。

 養育費の金額は、話し合いで決まらない場合、原則、裁判所の養育費・婚姻費用算定表(2019年版)に従い、計算されます。

 この算定表は、子どもの人数と年齢により区分され、各表の行に養育費を支払う方(義務者)の年収、列に養育費を受ける方(権利者)の年収が記載されており、この交わる点が毎月の養育費の標準となります。

 権利者監護の子1人(5歳)、義務者の年収400万円(給与所得)、権利者の年収100万円(給与所得)であれば、月4~6万円が標準です。

 養育費は、原則、請求した時点以降の分が支払い対象となります。請求しなかった過去分は支払い対象にならない可能性がありますので、離婚や別居の際は請求を忘れないようにご注意ください。

 話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に「養育費の調停」を申し立てます。 調停とは、裁判所が話し合いを仲介して解決を図る手続きです。調停でも解決しないときは、裁判所に結論を決めてもらう「審判」に移ります。

 ところで、養育費が決まっても、義務者が支払わないケースがあります。執行証書、調停調書、審判書等を取得すれば、地方裁判所を通じて義務者の給与等を差し押さえて養育費を得ることができます。万全を期すのであれば、費用はかかりますが、こうした書面を取得しておくのも一案です。

 なお、法改正により2022年4月1日からは18歳で「成年」となりましたが、子どもが18歳以上でも未成熟である限り養育費の支払い対象になるとの見解もあります。また、法改正前に決まった養育費が法改正に伴い変更される可能性は小さいと筆者は考えます。

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