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夫が事故で意識不明-家裁で成年後見人を選出-

 神戸新聞2017年12月6日掲載
執筆者:秋山 侑平弁護士

 夫が交通事故で意識不明になり、物事の判断ができない状態です。事故の相手方との示談はどうしたらよいでしょうか。また、後見人を付けた場合、その費用は相手に請求できますか?

 交通事故に遭った場合、被害者は加害者に対して、治療費、得られるはずだった収入(休業損害や逸失利益という)、慰謝料などについて、不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(民法709条)。

 しかし、損害賠償を請求しようにも、被害者が意識不明になり、物事の判断ができない状態になっている場合(法律用語では意思無能力)には、示談交渉も弁護士らへの依頼も法律上は行うことができません。損害賠償請求ができるのは原則として被害者本人のみですので、家族が代わりに請求することもできません(ただし、被害者が未成年者の場合は親権者が代わりに請求できる)。

 そこで、このような場合には、被害者の住所を管轄する家庭裁判所に申し立てを行い、:被害者の成年後見人を選んでもらう必要があります。成年後見人には、本人の代理を務める権利や本人の財産を管理する権利が法律上与えられています(民法859条1 項)。被害者の成年後見人は被害者に代わって損害賠償請求を行い、被害者賠償金を管理することができます。

 成年後見人には親族がなることもできますが、本人の財産が多額に上る場合や相談事例のように損害賠償請求などの複雑な法的処理が必要な場合は、弁謹士などの専門家が選ばれます。

 成年後見人を選ぶには、家庭裁判所に手数料を納めねばなりません。また、裁判所が必要と判断した場合には、本人の判断能力について精神鑑定をしなければならず、この場合、鑑定費用も支払う必要があります。

 そして、成年後見人が選任された後には、定期的に成年後見人への報酬を、 本人の財産から支払わなければなりません。これらの報酬は、交通事故に遭ったために判断能力を失わせる結果となり発生した費用で、交通事故との因果関係が認められます。従って、加害者はこれらの置用についても賠償しなければならないと考えます。

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