くらしの法律相談

ヒマリオンの部屋ヒマリオンの部屋

2026年

元夫が無断で子の教材購入 元妻に支払い義務?-「日常の家事」該当かで判断

 神戸新聞2026年5月20日掲載
執筆者:今田 倫聖弁護士

 婚姻中に元夫が相談なく100万円の子ども用学習教材を購入していました。元夫は代金を払えないようで、元妻である私に請求書が届いています。私が元夫の代わりに支払わないといけないのでしょうか。

 原則として夫婦の一方がした契約について、夫婦といえども他方配偶者は責任を負いません。しかし、婚姻期間中の「日常の家事」に関する行為の場合は、他方の配偶者も責任を負担しなければならない場合があります(民法761条)。そのため、今回の子ども用学習教材の購入契約が、「日常の家事」に関するものに当たるか否かが問題になります。

 「日常の家事」とは、子どもを含む夫婦の共同生活に通常必要とされるものをいいます。そのため、一般論では、食料品や衣類、家具の購入、子どもの教育に関する契約は「日常の家事」にあたるとされますが、その夫婦の具体的な状況や契約の内容次第では「日常の家事」の範囲外とされることがあります。

 過去の裁判例では、妻が夫に相談せず52万円ほどの高校受験用教材を購入し、約20万円の手数料で立て替え払いしてもらった契約について、夫婦の共同生活に通常必要とされるものには該当せず、夫は妻の代わりに責任を負わないとしたものがあります(八女簡裁平成12年10月12日)。一方で、夫に年550万円程度の収入があり妻も収入がある事案において、その妻が別居中にした約59万円の子ども用英語教材の契約が「日常の家事」にあたるとし、夫に支払いを命じた事例もあります(東京地裁平成10年12月2日)。

 裁判所は、夫婦の社会的地位や職業、収入、資産、生活地域の慣習などに加え、その契約の金額や支払い方法、時には販売態様なども考慮してその契約が夫婦の共同生活に通常必要といえるか、「日常の家事」に該当するかを判断しているといえます。

 今回の英語教材購入費の100万円は婚姻当時の収入状況や資産に照らして高額なものでしょうか。また、支払い方法は長期の分割や高額な手数料が生じるものでしょうか。当時の世帯収入などに照らして負担が大きいものであれば、「日常の家事」の範囲外であり、元妻である相談者は責任を負わない可能性も十分にあります。ぜひお近くの弁護士にご相談ください。