意見表明

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兵庫県・神戸地方法務局・兵庫労働局との協力・連携に際し コロナ禍に伴うありとあらゆる差別を許さない会長声明

2021年(令和3年)11月9日
兵庫県弁護士会
会長 津久井 進

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)感染拡大によるパンデミックからまもなく2年になろうとしています。2021年(令和3年)4月12日付の「コロナ禍におけるありとあらゆる差別偏見を許さない会長声明」でも指摘したとおり、今回のコロナ禍は災害にほかなりません。この間、多くの方々の「ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利」(憲法前文)が脅かされ続けてきました。今もなお最前線で献身的な努力を続けておられる医療関係者、保健所等の行政関係者、ワクチン開発を行う事業者のみなさまに、兵庫県弁護士会を代表し、改めて感謝を申し上げます。

 コロナ禍に関する相談を毎日受け付けていますが、今なお職場での差別的な取り扱いをはじめ、様々な場面で差別や偏見に苦しんでいる方々の声を聞いています。当初は、感染者に対する差別、あるいは感染対策に対する姿勢を非難する誹謗中傷などが目立ちました。近時は、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種が進む中、ワクチンに関連するデマや誹謗中傷に加え、ワクチン接種をめぐる差別に関する相談も増えています。
 ワクチンをめぐっては、自らの疾患や既往歴などの事情や、アナフィラキシーショック、心筋炎その他の重篤な副反応例が紹介されていること等の不安から接種を見送り、あるいは、自らの健康上の理由等から接種できない方々も多数存在します。昨年改正された予防接種法第9条においても、ワクチンの接種は努力義務とされ、同法律案に対する附帯決議では「接種するかしないかは国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること」と特に確認されているとおりです。ワクチン接種証明書は、海外渡航における活用に加え、公営施設、公共交通機関、民間の宿泊施設、飲食店、旅行・イベント等の利用に際して要求する動きもあり、他国においてもワクチン接種証明による経済活動が行われていることが報じられています。もっとも、コロナ禍の感染者数が急速に減少した理由は、科学的には不明な点も多く、専門家により第6波の感染のおそれも指摘されている中、ワクチン接種による感染抑止効果を過度に評価し、ワクチン接種を終えた方が多数を占めたことを理由に接種したくともできない方々や接種を拒む方々の社会生活が不当に損なわることがあってはなりません。個人の意思に反してワクチン接種を事実上強制する事態を招くことになれば、一人ひとりの価値判断を尊重し、自己決定権を保障する憲法13条の見地からは許されないと考えます。
 私たちは、個人の尊厳を掲げる憲法13条や合理的な理由なく差別的取り扱いを禁止する憲法14条第1項の理念に沿って、日常のサービスの利用のために何を必要とすべきかを検討しなければなりません。ワクチン接種をした方としていない方が共生し、誰でも等しく平和に日常生活を過ごせるように、接種証明制度のみならず、公費によるPCR検査や抗原検査などによってサービスの利用を認める仕組みなども検討していくなど、ワクチン接種をしていない方への合理的な配慮が必要でしょう。

 私たち弁護士には、あらゆる手段を通じて、コロナ禍における差別偏見をはじめ、一人ひとりの人権が脅かされる事態を防ぎ、被害に遭われた方々の救済に努める責務があります。当会は、今後も、新型コロナウイルス感染症に対し、偏見や差別により、社会が分断されることなく、それぞれの置かれた立場を尊重し、共生できる社会を目指していきます。
 そして、私たちは、本日以降、兵庫県、神戸地方法務局、兵庫労働局等の協力・連携を得ながら、これまで以上に、基本的人権の擁護と社会正義の実現をその使命とする弁護士として、ありとあらゆる差別偏見が許されないことを発信し続け、これからも差別偏見を防止する活動を続けていく決意を改めて表明します。

以上

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