意見表明

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死刑執行に関する会長声明

2025年(令和7年)7月4日

兵庫県弁護士会 会 長  中  山  稔  規 

<声明の趣旨>

  当会は、本年6月27日に東京拘置所において1名の死刑囚に執行された死刑に対し強く抗議するとともに、改めて、政府に対し、死刑制度の存廃を含む刑罰制度全体の見直しについて、国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを求め、その議論が尽くされるまで、死刑の執行停止を求める。

<声明の理由>

 本年6月27日、東京拘置所において、1名の死刑囚に対する死刑が執行された。2022年7月の執行から3年が経過しようとしている矢先に、石破内閣として、初めての死刑執行である。

 当会はこれまでに、死刑確定者に対する再審無罪判決があること、世界的にも死刑が廃止される潮流であり、2016年12月には国連総会において加盟国193カ国中117カ国の賛成により死刑存置国に対する死刑執行停止を求める決議が採択されていること、日本弁護士連合会においても、同年10月7日に開催された第59回人権擁護大会において、2020年までに死刑制度の廃止を目指し、凶悪犯罪に対しては死刑に代わる代替刑を検討すべきとする宣言が採択されていることを理由に死刑の執行停止を求めてきた。

 そもそも死刑制度が人間存在の根元である生命を奪い去る最も厳しい刑罰であることに異論はないと思われる。

 確かに、犯罪による被害者及びその家族の精神的・経済的な苦痛を考慮すると、犯罪予防の見地からも重い刑罰を設けるべきことは言うまでもないことであり、そのような重大犯罪を防止することは国のみならず社会全体の責務である。しかし、犯罪被害者及びその家族の心情のみをもって死刑制度の存廃が議論されるべきではない。そもそも死刑制度が犯罪の一般予防になるという科学的根拠はあるのか、死刑執行により犯罪被害の真の救済となるのかについて、改めて議論し、検証がなされなければならない。

 当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を図るという弁護士の使命に基づき、これまで、死刑制度の存置に関する国民的議論が十分尽くされるまでは死刑の執行を停止すべきであることを繰り返し求めてきており、2024年11月13日には、「日本の死刑制度について考える懇話会」が公表した提言を踏まえて死刑執行の停止を求めたにもかかわらず、突然、死刑の執行が行われたことに遺憾の意を表明し、強く抗議せざるを得ない。当会は、重ねて、死刑制度の存廃を含む刑罰制度全体の見直しについて、速やかに国会及び内閣の下に死刑制度に関する根本的な検討を任務とする公的な会議体を設置することを求め、その議論が尽くされるまで、死刑の執行停止を求める。

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