再審法の抜本的改正を求める声が全国で高まっている。刑事司法におけるえん罪被害者を救済するという再審制度の本旨を実効あるものとするため、再審法の根本的見直しは急務である。
当会は、これまでにも、2023年(令和5年)3月1日開催の臨時総会において、「再審法改正を求める決議」を採択し、また、2024年(令和6年)9月26日には、「『袴田事件』の再審無罪判決を受けて、検察官上訴権の放棄及び再審法の速やかな改正を求める会長声明」を発出し、政府及び国会に対し、再審法の全面的な改正を速やかに行うよう求めてきた。
再審法の最大の課題は、えん罪の被害者が再審開始の決定を得るまでに過度の困難と長期間を強いられるという点にある。現在の制度では、再審請求審における証拠開示が裁判所の裁量に委ねられており、再審請求人が有効な証拠を収集することが著しく困難である。また、再審開始決定に対して検察官による不服申立てが可能とされているため、開始決定の確定が不当に引き延ばされる事態が続いている。
とりわけ、「福井女子中学生殺人事件」では、第1次再審請求において2011年(平成23年)11月30日に再審開始決定がなされたものの、検察官の不服申立てによりこれが取り消され、その救済が著しく遅延している。
こうした問題を根本的に解決するためには、2025年(令和7年)6月18日に衆議院に提出された、「刑事訴訟法の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という。)に定められた、①再審請求審における検察官保管証拠等の開示命令、②再審開始決定に対する検察官の不服申立ての禁止、③再審請求審等における裁判官の除斥及び忌避、④再審請求審における手続規定を中心とした再審法改正が速やかに実現されなければならない。
ところが、再審法改正に関しては、2025年(令和7年)4月21日以降、法制審議会刑事法(再審関係)部会(以下「法制審部会」という。)でも審議が行われているところ、国会議員の一部からは、法制審部会での審議に委ねるべきであるとの意見も出ている。
この点につき、まず、再審法改正について、検察官と密接な関係を有する法務省が事務局を務める法制審部会が主導的な役割を担うことについて、強い懸念を表明せざるを得ない。加えて、法制審部会での審議には長期間を要することから、迅速な法改正が求められる現下の状況にはそぐわない。
したがって、再審法の実効性ある改正を速やかに実現するためには、まずは「国の唯一の立法機関」である国会において、速やかにあるべき再審法改正の方向性を示すことが強く求められる。そして、法制審部会では、その方向性に即して、残された論点も含めて審議を尽くす役割を担うべきである。
よって、当会は、国会に対し、速やかに本法案の審議を進め、今秋に予定される臨時国会において本法案を可決・成立させることを強く求めるものである。
2025年(令和7年)9月25日
兵庫県弁護士会
会長 中 山 稔 規