2026年(令和8年)10月30日
兵庫県弁護士会 会 長 村 上 英 樹
2026年(令和8年)10月23日、最高裁判所第三小法廷は、兵庫県内の生 活保護利用者らが、2013年(平成25年)8月から3回に分けて実施された生活扶助基準の引下げ(以下「本引下げ」という。)に係る保護費減額処分の取消し等を求めた各訴訟の上告審において、厚生労働大臣による本引下げの違法性を認め、保護費の減額処分を取り消す判決(以下「本判決」という。)を言い渡した。本引下げは、約30年間にわたり用いられてきた方式を変更し、基準部会等の審議検討を経ず厚生労働大臣独自の手法で算出された物価変動率のみを直接の指標とする「デフレ調整」を主要な理由として行われたが、本判決は、「デフレ調整」は、専門的知見に基づいた十分な説明がされているということはできず、厚生労働大臣に与えられた裁量を逸脱・濫用するものであり、生活保護法3条、8条2項に違反して違法というべきであると判断した。2025年6月27日の最高裁判決と同様に、本引下げが、「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(憲法25条1項、生活保護法3条)の重要性を軽視する恣意的なものであったことを的確に指摘したものであり高く評価すべきものである。
当会は、こうした不平等な対応策に対し、全ての生活保護利用者に対する全面的 な保障措置を求めていたところであるが(2026年(令和8年)2月19日 最高裁判決をふまえ、全ての生活保護利用者及び元利用者に対する平等な補償を求める会長談話)、国は、2025年6月27日の最高裁判決の後、あらためて保護費を2.49%減額したという経緯がある。本判決を受け、国に対し、不平等な減額を撤回し、全ての生活保護利用者及び元利用者に対する本引下げによる減額分を平等に補償し、全面解決を講じるように改めて求める次第である。
当会は、かねてより、生活保護基準は、国民の生活を支える「最後のセーフティ ネット」として、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基 準であって、地方税の非課税基準、国民健康保険の保険料・一部負担金の減免基準、 介護保険の利用料・保険料の減額基準、障害者自立支援法による利用料の減額基準、 生活福祉資金の貸付対象基準、就学援助の給付対象基準など、医療・福祉・教育・ 税制などの多様な施策などにも影響を及ぼすため、生活保護を利用している者や今 後生活保護の利用可能性がある者のみならず、生活保護基準の引下げは、これら の施策を利用している低所得層の人の生活にも重大な影響を与えるとして、保護基 準の引下げに反対してきた(2012年(平成24年)11月5日「生活保護基準の引き下げに強く反対する会長声明」)。
当会は、国に対し、本判決をふまえて早急に、生活保護利用者及び元利用者への 補償を求めるとともに、引き続き、生活保護制度の改善と充実のための相談・提 言活動を今後とも積極的に行っていく次第である。
以上

