2025年(令和7年)5月3日
兵庫県弁護士会 会 長 中 山 稔 規
市民の皆様へ
本日は、日本国憲法が施行78年を迎える日となります。
終戦後に施行された日本国憲法は、意見や価値観の違いを超えて、マイノリティであるかどうかに関わらず全ての人々に幸せになる権利が保障されることを念頭に、国民主権、平和主義、基本的人権の尊重を原則として制定されています。そして、憲法は、私たち市民が生活する上でのルールを定めた法律とは異なり、国の権力に限界を設け、権力を縛るルールとして定められています。
また、今年は広島、長崎への原爆投下や終戦から80年を迎える年になります。そうした意味でも、本日は私たち市民が憲法が持ち続けてきた力、そして憲法の意義について考える良い機会になるものと存じます。
特に、昨今の世界情勢を見ると、2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻や、2023年10月より激化したイスラエル軍によるパレスチナ自治区ガザ地区への軍事侵攻など、多くの尊い命が奪われる事態が相次いでいます。
国内においても、防衛費を従来よりも大幅に増大させるなど、安全保障に係る問題や、SNS投稿による誹謗中傷と表現の自由の問題といった、憲法上の平和主義や各基本的人権が正面から問題となる出来事が多く存在します。当会においても、「反撃能力」の保有に反対する声明など、時宜に応じて憲法問題に関する会長声明を発出してまいりました。
さて、こうした問題を考えるにあたって、最も大切なことは、やはり主義主張の違いを受け入れつつ冷静に問題意識を持って議論を重ねることではないでしょうか。実際に、戦後日本において憲法を変えるべきか、変えないべきかといった議論は諤々となされてきました。そうしたことを考えるにあたっても、意見が異なるからといって無条件に否定の上攻撃をするのではなく、お互いの主張を尊重した上でさらに意見を出してゆくことが大事だと考えます。
兵庫県弁護士会は、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現する」(弁護士法1条)という弁護士に求められる使命のもと、今後とも、全ての人が個人として尊重される、誰一人として取り残されない社会を目指し、活動、提言に取り組むとともに、憲法をはじめあらゆる法律問題及び社会問題に関して、有益な議論の契機となるような情報提供や学習会にも真摯に取り組んでまいります。