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2026年

夫の不貞相手「慰謝料は支払わない」と主張-「夫婦関係の破綻」争点に





 神戸新聞2026年11月4日掲載
執筆者:兵庫県弁護士会広報委員会

夫が不倫していることが発覚しました。夫も同席して相手の女性と会い、私から「夫とは今後会わないこと、私に慰謝料を支払うこと」を伝えると、相手の女性から「夫婦関係は終わっていると聞いていたから付き合った。私は悪くないから慰謝料は支払わない」と言われました。慰謝料はもらえないのでしょうか。

 婚姻関係中は、夫婦は互いに「貞操義務」を負っています。夫の不貞(不倫)は、夫と相手女性の行為(故意または過失)によって、妻の「法律上保護される利益」(夫婦の共同生活の平和の維持など)を侵害されたことで精神的苦痛を受けた、と考えられるため、民法709条に基づき損害賠償請求ができます。なお慰謝料とは、精神的苦痛に対する損害賠償のことをいいます。

 しかし、不貞をした時、夫婦関係が既に破綻していたと認められる場合は、特段の事情がない限り、法律上保護される利益が侵害されていないと考えられるため、慰謝料請求は認められません(最高裁平成8年3月26日第3法廷判決)。

 「夫婦関係の破綻」とは、夫婦に婚姻継続の意思がない状態かつ、共同で夫婦生活を行う見込みがない状態をいいます。具体的には、別居の有無、別居期間、関係修復への努力などを総合的に判断します。ご相談者が、夫と同居中で、妻としては不倫発覚までは普通に夫婦生活をしていたし、今後も離婚の意思もないということであれば、夫婦関係は破綻していないと考えられるでしょう。

 ただ、相手の女性が「夫婦関係が破綻していたと信じ、かつ信じるについて相当の理由」があった場合には、不貞相手には落ち度(過失)はないとして、損害賠償請求が認められません(最高裁令和8年6月15日第2小法廷)。夫婦関係が破綻していたと信じたことに相当の理由があったかについては、例えば、夫婦が互いのプライバシーに干渉しないことを提案したメールのやりとりを見せられた▽離婚のために弁護士に相談に行くことを知らされていた▽妻が署名した離婚届を見せられた-などの複数の事情から総合的に判断します。夫から「夫婦関係は終わっている」と聞かされていただけでは、落ち度がなかったとは認められないでしょう。

 不貞相手に慰謝料請求をするためには、このように法的根拠や判例に基づく立証が必要となります。まずは弁護士に相談されることをおすすめします。



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