神戸新聞2026年9月16日掲載
執筆者:兵庫県弁護士会広報委員会
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父が亡くなりました。私には兄弟がおり、父がかつて個人事業を経営していた時の債務の全容が不明です。私1人が父所有の自宅に住んでおり、できればこのまま住み続けたいと考えていますが、可能でしょうか。
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相続が発生した際、相続人は以下の3つの選択肢から相続の方法を選びます。「単純承認」はプラスもマイナスも全ての財産を相続するものであり、「相続放棄」は相続権を一切放棄して借金も免れるものです。そして「限定承認」は相続したプラスの財産の範囲内でのみ債務の責任を負います。なお、相続放棄か限定承認をする場合は、相続を知った時から3カ月以内の熟慮期間に行う必要があるので期間制限に注意してください。
これらの選択肢を検討するにあたって、最初にすべきことは、債務額を調査することです。調査の結果、明らかにプラスの財産が多いと分かれば「単純承認」を選び、兄弟との合意により自宅に住み続けることができます。ただし、後から借金が見つかれば、相続人自身の財産からの返済が必要となるリスクはあります。一方、プラスの財産よりも債務のほうが多く、返済する余力もない場合は、「相続放棄」を選択すべきです。
問題は、3カ月の熟慮期間ではプラスの財産と債務のどちらが多いのか分からない場合です。この場合、家庭裁判所に相続放棄の熟慮期間の伸長申し立てを行い、期間の延長が認められると調査を継続しますが、延長し続けることは難しいこともあり得ます。
そうすると、「限定承認」をすることも選択肢の1つとなるでしょう。ただし、清算手続きや遺産目録の作成が必要であるなど手続きが複雑です。また、自宅以外の父の財産で債務を支払えない場合、自宅を相続するためにはその価値相当額の支払いがが必要となります。仮に、清算後に新たな債務が判明した場合、残余財産があれば支払い義務が生じるリスクもあります。
さらに、限定承認は、相続人が複数いる場合は全員が限定承認をし、遺産分割協議を行うことが必要です。その上で、遺産分割において、相談者が不動産を相続するという合意が必要となります。
以上の通り、限定承認を選択するのであれば、他の相続人の意向に加えて、ご自身の経済状況や将来の負担の可能性と照らし合わせて慎重に判断しなければなりません。まずは、ご兄弟としっかりと話し合い、早めに弁護士に相談してください。


