意見表明

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「オンライン接見」の実現に向けた議論を求める会長声明

2022年(令和4年)3月7日
兵庫県弁護士会      
会 長  津  久  井  進

<声明の趣旨>

 被疑者・被告人の人権保障を拡充するための「オンライン接見」の実現に向けて、「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」において、さらに具体的な議論が尽くされることを強く求める。

<声明の理由>

1 刑事手続のIT化の議論の状況と論点項目としてのオンライン接見

(1) 現在、刑事手続のIT化の議論が、法務省の検討会(「刑事手続における情報通信技術の活用に関する検討会」。以下、単に「検討会」という。)で進められている。検討会では、刑事手続について情報通信技術を活用する方策に関し、現行法上の法的課題を抽出・整理した上で、その在り方が検討されている。

(2) 検討会における論点項目として、「書類の電子データ化、発受のオンライン化」「捜査・公判における手続の非対面・遠隔化」が挙げられており、この中で、「被疑者・被告人との接見」も掲げられている。そして、その中では、「ビデオリンク方式」(対面していない者との間で、映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法)による接見(以下「オンライン接見」という。)を行うことが検討対象となっている。

2 オンライン接見を実現する必要性

(1) 現在においても、身体を拘束された被疑者・被告人が、弁護人と接見して適切な助言を受ける間もなく、取調べや自白を強要されるような実態があり、被疑者の憲法上の権利は十分に保障されているとはいえない。対面によ る接見を速やかに行うことが重要であることは言うまでもないが、オンライン接見は、被疑者・被告人の防御権の保障という憲法的観点から、さらに速やかな弁護人接見の手段として、実現する必要性が高い。

(2) とりわけ、逮捕段階における被疑者の権利保障、遠隔地で身体拘束を受ける被疑者・被告人の権利保障という点から、迅速な接見を可能とするオンライン接見は極めて必要性が高い。
 すなわち、現在、日本弁護士連合会では、できる限り早期に被疑者の権利の保護をするため、逮捕段階における公的弁護制度の創設が議論されている。この逮捕段階における公的弁護制度が法制化した際に、早期の被疑者の権利保護をするために、逮捕直後における迅速な接見を行う必要がある。
 また、当会が存する兵庫県内には美方警察署、篠山留置施設のような、弁護人が接見に行くために数時間を要するような遠隔地の留置施設が存在し、このような遠方の施設に身体拘束された被疑者・被告人の権利保障のためにも、迅速な接見を行う必要性が存在する。
 このような、逮捕直後における迅速な接見、遠隔地における迅速な接見を行うために、オンライン接見が有用な手段となるから、その実現の必要性は極めて高い。

(3) 諸外国においても被疑者・被告人が電話で弁護人の助言を受けることが一般的に行われている。韓国では、弁護人との間の秘密交通権が保障された画像接見制度が実施されている。

3 検討会における意見、とりわけ接見交通権の保障について

(1) 検討会における議論の中で、オンライン接見に対しては、設備や予算その他の問題が指摘され、また、なりすましや罪証隠滅のおそれなどを理由にオンライン接見を実施する場所(アクセスポイント)を限定したり秘密交通権の保障のない制度も検討されている。

(2) しかし、新たな設備の整備等が必要なのは、令状手続のオンライン化をはじめとする刑事手続のIT化全般に妥当することである。遅滞なく通信し、協議するための十分な機会、時間及び設備を提供されなければならないことは、国連被拘禁者処遇最低基準規則にも定められているところであり、被疑者・被告人が弁護人の援助を受ける権利を実現するための設備等も当然に国の責任において提供されるべきである。また、現に諸外国において支障なくオンライン接見が行われている実情に鑑みても、検討会で指摘されている問題は解決可能である。
 なりすましや罪証隠滅のおそれについても抽象的なものにすぎないし、それらを排除すべきとしても、アクセスポイントを限定する方法ではなく、より具体的で効果的な方法がさらに検討されるべきである。特に、秘密交通権の保障のない制度では憲法で保障する被疑者・被告人の弁護人の援助を受ける権利を没却するもので、このような制度の検討は論外であり、オンライン接見であっても弁護人との秘密交通権が保障された接見制度でなければならない。

4 まとめ
 刑事手続のIT化やオンライン接見の議論は、何よりも被疑者・被告人の人権保障を拡充するという観点で進められるべきである。当会は、オンライン接見の実現に向け、検討会において更に具体的な議論が尽くされることを強く求める。

以上

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