意見表明

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「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」に対する会長声明

2022年(令和4年)3月24日
兵庫県弁護士会
会 長  津 久 井 進

 2022年(令和4年)3月1日、「消費者契約法及び消費者の財産的被害の集団的な回復のための民事の裁判手続の特例に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本改正案」という。)が閣議決定され、国会に提出された。

 本改正案のうち、消費者契約法の改正に関する部分は、2018年(平成30年)の消費者契約法改正の際の衆参両院附帯決議において指摘された喫緊の課題の検討のため、消費者庁が開催した消費者契約に関する検討会が、約1年9か月、合計23回の検討を経て、2021年(令和3年)9月に取りまとめた報告書(以下「検討会報告書」という。)を受けたものであるが、本改正案は、検討会報告書の要請に応えていない。

 検討会報告書では、①消費者契約法第4条第3項各号の困惑類型の脱法防止規定の創設、②消費者の慎重な検討の機会を奪うような勧誘があった場合の消費者の心理状態に着目した取消権の創設、③判断力の著しく低下した消費者が生活に著しい支障が及ぶような内容の契約をした場合の消費者の判断力に着目した取消権の創設、という新たな提案がなされた。また、サルベージ条項により賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を不当条項として無効とすることや、所有権等を放棄するものとみなす条項及び消費者の解除権の行使を制限する条項を不当条項に関する消費者契約法第10条の第1要件の例示として掲げることも提案された。これらの具体的提案は、上記附帯決議や成年年齢引下げの民法改正の際の参議院附帯決議において、高齢者、若年成人等の知識・経験・判断力の不足など消費者が合理的な判断をすることができない事情を事業者が不当に利用した場合の取消権(いわゆるつけ込み型不当勧誘取消権)の創設が求められたこと等に対応しようとするものであった。

 当会も、高齢者や若年者の消費者被害の予防・救済のため、種々の取組みをしているが、成年年齢引下げが目前に迫る当月には、成年年齢引下げによる問題について考えるシンポジウムを開催したところである。

 しかし、本改正案には、これらの取消権に関する提案に対応する部分は盛り込まれておらず、不当条項に関する提案についても、賠償請求を抑制するおそれがある不明確な免責条項を無効とする規定のみが盛り込まれたにすぎず、従来からの消費者立法改正にあたって採用されてきた、学識経験者・消費者団体の代表・事業者団体の代表から構成される検討会(審議会)において、業界団体や消費者団体からのヒアリング等の事実調査も踏まえた上で衆知を結集して報告書を作成し、この報告書に基づいて立法がなされるというルールは無視されているに等しい。 多発する消費者被害の救済に資するよう、法改正手続は早急に進められるべきであるが、高齢者や若年者の消費者被害の防止の見地から、本改正案は根本的に見直されるべきであり、少なくとも、検討会報告書が提案した取消権及び不当条項に関する規定を含むものとすべきである。

以上

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