意見表明

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憲法改正手続法(国民投票法)につき改めて抜本的改正を求める会長声明

2021年(令和3年)6月16日
兵庫県弁護士会
会 長  津 久 井 進

 第1 声明の趣旨

 当会は、国会に対し、国民投票の公平性や正当性の確保の観点から、改めて、憲法改正手続法の抜本的な改正を求める。

 第2 声明の理由

1 2021年6月11日、「日本国憲法の改正手続に関する法律」(以下「憲法改正手続法」という。)の改正法(以下「本改正法」という。)が成立した。憲法改正の国民投票運動などを規定した憲法改正手続法(国民投票法)は成立段階から、2007年(平成19年)の参議院の特別委員会において18項目もの附帯決議が定められるなど、将来の改正の余地を大きく残すものとなっていたにもかかわらず、これまで一度の改正が行われただけで、附帯決議によって検討が必要な重要な点について抜本的な検討・改正がなされていなかった。

2 当会は、これまでにも、2005年(平成17年)9月8日「憲法改正国民投票法案について慎重な対応を求める意見書」、2006年(平成18年)10月12日「憲法改正国民投票法案についての意見書」、2007年(平成19年)4月24日「憲法改正手続法案の慎重審議を求める緊急声明」、2013年(平成25年)10月24日「憲法改正手続法の根本的改正を要請する会長声明」、2014年(平成26年)6月13日「憲法改正手続法「改正」に関する会長談話」を発出し、2018年(平成30年)5月24日「改めて憲法改正手続法(国民投票法)の抜本的改正を求める会長声明」では、特に、以下の8項目について、憲法改正の具体的議論を行う前に、憲法改正手続法である国民投票法の抜本的改正を行うように求めていた。

  1. ① 条文ごとの賛否の意思表示ができる投票方式に改正すること
  2. ② 公務員や教育者に対する規制の基準、及び、組織的多数人買収・利害誘導罪などの要件を明確かつ具体的な基準・要件に改正すること
  3. ③ 国民投票広報協議会の構成委員を賛成・反対の同数として選任することについて検討し、必要に応じ改正すること
  4. ④ 公費による意見広告は、公費の運用について公平性と中立性を確保し、公平性・中立性・客観性が担保された手続で選定された幅広い団体が利用できる制度とすることについて検討し、必要に応じ改正すること
  5. ⑤ 投票の14日前までの有料意見広告放送は、憲法改正賛成派と反対派の意見について実質的な公平性が確保され、14日前からの禁止が表現の自由に対する脅威とならないか、禁止期間が14日間で十分かつ適切なのか等の問題点について、改めて十分に検討を行い、必要に応じ改正すること
  6. ⑥ 両議院の発議から国民投票までの期間を少なくとも180日以上に改正すること
  7. ⑦ 最低投票率の定めを設けること、及び、「過半数」の基準を有効投票数ではなく総投票数に変更することなどについて十分に検討を行い、必要に応じ改正すること
  8. ⑧ 国民投票に対する無効訴訟の訴訟要件、特に、提訴期間、管轄裁判所、無効理由について、訴訟要件を緩和する方向で検討を行い、必要に応じ改正すること

3 しかしながら、今般の本改正法は、駅や商業施設への共通投票所の設置や期日前投票の弾力化など、2016年(平成28年)の公職選挙法改正に伴い導入された投票環境向上のための規定を整備するのみで、当会が提案した内容は全く顧慮しなかった。殊に、有料広告等の規制と最低投票率の規定がないままでは、国民の多様な意見が公平に議論の俎上に載らないため、自由で公正な国民投票運動が保障されないおそれが払拭されていない。さらに、いわゆるターゲティング広告などのインターネット広告によって、投票内容のみならず、投票の是非も含め、無意識のうちに判断が歪められる危険性が指摘されているところである。

4 以上のとおり、本改正法は、有料広告規制や最低投票率についての検討が十分になされておらず、国民の基本的人権を保障する憲法の改正手続法として十分ではないどころか、公平性や正当性に疑義を抱えた国民投票が実施されるおそれがあるから、国会に対し、国民投票の公平性や正当性の確保の観点から、改めて、憲法改正手続法について抜本的な改正を求める次第である。

以上

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