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環境の小窓バックナンバー

環境の小窓(25)〜だれが法廷に立てるのか〜

2017年(平成29年)5月29日
執筆者:関根孝道 弁護士

 アマミノクロウサギ事件をご存じでしょうか。とある県知事が林地の開発を許可しましたところ,特別天然記念物のアマミノクロウサギがこの許可の取消しを求めて知事を訴えた「自然の権利訴訟」といわれるものです。訴訟の真のねらいは、一般市民が自然環境保護のための訴訟を提起できるように、従来の判例の考え方に変更を迫ることでした。
 環境保全のために提起される訴訟を環境訴訟といいます。さまざまな訴訟があります。とくに困難なのが自然環境保護のための訴訟です。何が困難なのかといいますと,自然環境の保護を目的として訴訟を提起しても、「あなたには訴訟を提起する資格がありません」として、門前払いされるからです。これはどういうことでしょうか。
 訴えを起こす原告は、「法律上の利益を有する者」である必要があるとされ、誰でも自由に訴えを起こすことができる訳ではありません。このような利益が自然環境保護のための訴訟において、「人」(自然人や法人)に認められるのでしょうか。裁判所は、自然保護の法規定(たとえば、絶滅のおそれのある種を保護したり、自然保護区の開発を規制する規定など)は、公益保護の規定だと解釈します。その結果、「人」が自然保護法違反を理由に訴えを提起しても、その人は法律上の利益を有していないという理由で、訴えは斥けられます。つまり、自然環境保護を目的とした訴訟をだれも提起できず、たとえ法律違反があっても訴訟で是正できない可能性があるのです。
 このような事態を避けるため、先述の事件では、「法律上の利益を有する者」として「動物」であるアマミノクロウサギを原告にしました。それでも、訴訟は却下されました。ただ、裁判所は「自然の権利という観念は、人(自然人)及び法人の個人的利益の救済を念頭に置いた従来の現行法の枠組みのままで今後もよいのかどうかという極めて困難で、かつ、避けては通れない問題を我々に提起した」と述べ、自然の権利訴訟への一定の理解を示しました。
 消費者保護の世界では、一定の要件を満たす消費者団体が被害者に代わって訴訟を起こすことができる消費者団体訴訟制度が設けられています。環境法の世界でも、環境団体などが自然環境保護のための訴訟を提起できるような制度の導入が望まれるところです。

環境の小窓(24)〜築地市場移転問題と土壌汚染対策法〜

2017年(平成29年)1月22日
執筆者:金ア正行 弁護士

 築地市場の移転予定地から高濃度の有害物質が検出されたことがメディアで報道されています。
 そこで、今回は、土壌汚染に関する法律である土壌汚染対策法について考えてみたいと思います。
 土壌汚染は、地中で発生し、目には見えないことから、簡単には気付きません。そこで、土壌汚染の有無を調査することが望ましいといえます。ただし、すべての土地を調査することは、費用や時間がかかり大変です。そのため、土壌汚染対策法では、有害物質を使用していた施設を廃止する場合や大規模な土地の堀削をする場合など一定の場合に限定して、土地所有者等に土壌の調査を義務付けています。
 調査の結果、土壌汚染が一定の基準を超えていた場合には、その区域は、要措置区域や形質変更時要届出区域に指定されます。形質変更時要届出区域に指定された場合には、土壌を掘削する際に、届出が必要となります。
 東京都や東京都中央卸売市場のホームページによれば、築地市場の移転予定地の一部は、形質変更時要届出区域に指定されているそうです。指定解除に向けて地下水のモニタリングを行なってきていた中で、報道さている有害物質の検出が問題となりました。
 土壌汚染は、築地市場だけの問題でなく、日本全国どこででも起こりえる環境問題です。私たちも、特に不動産の取引をする際には、土壌汚染に注意しておく必要があるでしょう。

環境の小窓(23)〜ラムサール条約関連の湿地フォーラムに参加して〜

2016年(平成28年)12月20日
執筆者:小沢秀造 弁護士

 湿地の保全のためのラムサール条約締結国会議が2018年にアラブ首長国連合のドバイで開催が予定されています。13回目の会議となります(COP13)。現在日本で重要な湿地として登録されているところが50カ所ありますが、順次登録湿地がふえていく予定です。 兵庫県の登録湿地としてはコウノトリが生息する豊岡で登録されています。
 ラムサール条約に関連して、湿地保全のNGOなどがあつまり、今年の10月29日30日と第11回の日韓NGO湿地フォーラム(略称)が岐阜市で開催され、参加してきました。湿地の保全のための日韓共同湿地調査が2000年にはじまっていますから日韓には非常にながい協力の歴史があるようです。湿地としての水田の役割の見直し、長良川と韓国4大河川という土木工事的な河川の破壊については水門を開けさせる地道な努力が必要であることなどが指摘されていました。
 開門などによる自然再生事例として、日本の中海、荒瀬ダム、英虞湾など、韓国のシファ湖の例が挙がっていました。自然環境の保全とともに自然再生も今後の課題となりそうです。

環境の小窓(22)〜IoT〜モノのインターネット〜

2016年(平成28年)12月20日
執筆者:大田悠記 弁護士

 皆さまは、「IoT」という言葉をご存知でしょうか。「IoT」とは、Intrernet of Thingsの略で、「モノのインターネット」、つまり、日常生活のあらゆるモノがインターネットにつながるという考え方です。エアコン、冷蔵庫、テレビ、照明などを連携させ、利便性・快適性の向上、省エネ・低コスト化に応用しようというものです。
 「IoT」の考え方は、既に多くのモノに導入されています。外出先からスマートフォンの遠隔操作でエアコンの電源を入れることができるというのも、「IoT」を体現するものです。
 もっとも、遠隔操作でエアコンの電源を入れることは、当初は、電気用品安全法違反とされていました。平成24年にこの機能が目玉だった新製品のエアコンが、発売前に経産省からストップがかかり、この機能を外されるといったこともありました。
 しかし、同法の規制対象は、あくまで家電そのもので、例えば、「HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)」のような家電の制御システムは規制対象外なため、遠隔操作が家電の一部機能だと規制対象になるが、別売りのシステムであれば規制対象にはならないと指摘されていました。50年以上前に施行された同法の規制は、「時代遅れ」とも批判されました。
 結局、同法の技術基準の解釈は平成25年に改正され、現在では、スマートフォンの遠隔操作でエアコンの電源を入れられる機能を搭載したエアコンが、広く販売されております。
 電力自由化もなされ、エネルギーの新時代に突入した現在、「IoT」による技術の進化は、私たちの暮らしにより一層の利便性・快適性をもたらしてくれるのだと思います。今後は、異なるメーカー間での家電の連携なども、望まれるところです。

環境の小窓(21)〜日弁連と環境問題〜

2016年(平成28年)10月19日
執筆者:筧宗憲 弁護士

 日頃から環境問題に関心をお持ちの皆さんに、一度、「日弁連のホームページ」にある意見書等をご覧いただくことをお勧めします。
 トップページの「会長声明・意見書等」「人権擁護大会宣言・決議集」の項目をクリックすると、「人権」「刑事・少年」「消費者」「労働問題」などと並んで、「環境・公害」に関する意見書や決議を、60年以上遡って見ることができます。
 思想信条や政治的立場も様々な弁護士会員から成る会が、社会に向かって、時の政治的課題ともなっている問題についてコメントすることについては、強制加入団体としては問題があるとの意見もあると思われます。
 しかし、意見書は、ダム建設中止問題、リニア新幹線問題、原発再稼働や原発輸出政策反対、地球温暖化防止やエネルギー政策、沖縄基地移転問題など、重要な政治課題についても、人権や環境の視点から検討を加えながら提言をしています。
 これは、弁護士法に規定される「人権擁護」と「社会正義の実現」という弁護士の使命から、現在および将来の国民が、安全で良好な環境のもとで生活する権利を守るために活動し発言するのは、当然であるという考えによるものです。
 具体例として、2000年10月の日弁連人権擁護大会の「エネルギー政策の転換を求める決議」を紹介します。

 提案理由の中で、日弁連の基本的立場について、「当連合会は、基本的人権の擁護と地球環境の保全の立場から、原子力の開発と利用について関心を持ち、原子力施設の安全性について検討を加え、原子力行政及びエネルギー政策のあり方について、次のような提言を行ってきた。稼働中の原子力施設の運転、建設について中止を含む抜本的再検討を行うこと、使用済燃料の再処理を止め、プルトニウムをエネルギー源とする政策を放棄すべきであること、エネルギー政策の立案過程における民主化・透明化を図り、エネルギー政策基本法を制定すべきであることなどである。」と、人権擁護と環境保全の観点から、脱原発の提言をしています。

 そこでは、東海村JCOでの臨界事故(作業員2名の死亡と多数の作業員と住民が被曝)、高速増殖炉「もんじゅ」のナトリウム漏れ事故、動燃東海再処理工場の火災・爆発事故等の続発の事実から、安全性、環境保護の面で原子力利用の問題点は明確になってきているとしていました。

 さらに、わが国の原子力安全規制行政は「主として通産省など原子力の推進のための官庁内部におかれ、総理府に置かれる原子力安全委員会は単なる諮問機関に過ぎず、その機能を十分果たしていない。このことが重大事故の続発を防げない原因の一つである。」と、安全対策の不備を指摘しています。

 2011年3月11日の福島原発事故のはるか以前から、日弁連がこのような提言をしていたことにもご注目いただき、また、その他の、多くの環境問題にも、時機に応じて積極的な提言をしてきたことをご参照いただけたら幸いです。

環境の小窓(20)〜温暖化対策が熱い〜

執筆者:金ア正行 弁護士

 「パリ協定」という言葉を聞いたことがありますか。
 2015年12月、フランスのパリにおいて、国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(略して「COP21」と呼ばれています。)が開催されました。
 この会議には、世界各国の代表が参加し、地球温暖化を防止するため、温暖化の原因とされる温室効果ガスの排出を削減することで合意しました。この合意のことを、会議が開催されたパリの地名をとって、「パリ協定」といいます。
 「パリ協定」では、世界の平均気温の上昇を2℃未満に抑えることや、世界各国が温室効果ガスの削減目標を作成して5年ごとに見直しすることなどが合意されました。
 パリ協定をうけて、2016年5月、日本政府は、地球温暖化対策計画を閣議決定しました。同計画で、日本は、2050年までに、現在よりも温室効果ガスの排出を80%削減することを目指すことになりました。
 「パリ協定」と言われると遠い世界のことのように思えますが、地球温暖化は私たちの日常生活にも関係してきます。一度、パリの地に想いをはせながら、身近な地球温暖化対策を考えてみませんか。

環境の小窓(19)〜能勢ダイオキシン問題に思う〜

執筆者:伊藤明子 弁護士

 大阪府能勢町・豊能町のごみ焼却施設から排出されたダイオキシン廃棄物が、神戸市に無断で西区神出町の産業廃棄物最終処分場に違法に埋立処分されていたことが問題になっています。2016年8月26日の報道によれば、廃棄物は掘り起こし・撤去され、豊能町内に2ヵ月間仮置きされることが決まったようです。しかし、能勢町のごみ焼却施設からの高濃度ダイオキシン汚染が発覚したのは1997年。2000年には公害調停が成立しましたが、20年近く経っても、最終処分について何の目処も立っていないのが現状です。
 こうしたダイオキシン廃棄物と比べるまでもなく、膨大な量の放射能廃棄物の行方を考えると、茫然自失してしまいます。一方、増え続ける高濃度放射能汚染水の漏出から連想するのは水俣湾の水銀ヘドロ埋立地です。1956年の公式確認から60年を迎えた水俣病ですが、寿命50年と言われる鋼矢板は老朽化(すでに30年以上経過)しており、地震時の液状化で水銀を含んだ埋め立て土砂が噴出する危険性も指摘されています。
 身近なところでは、建材に大量に使用されたアスベスト。ずさんな工事による建物改修・解体時の飛散事故報道が後を絶ちません。
 便利さや目先の経済性を追求した結果、取り返しの付かない被害を生むだけでなく、有毒物・危険物の処理のために莫大なコストと時間を要する場合がある……繰り返しの苦い経験を教訓として、私たちの社会は、変わっていけるのでしょうか。

環境の小窓(18)〜ワシントン条約について〜

執筆者:西川達也 弁護士

 日本が1980年に加盟したワシントン条約においては、野生生物のもつ多様な価値を認め、「特定の種が過度に国際取引の対象にならないように」種を保護することが謳われています(同条約前文)。これにより、日本では、国内法として種の保存法(正式名「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」)が制定されました。
 ワシントン条約の3つの附属書には、「絶滅のおそれのある種」が記載され、実際に規制対象となるのは、(1)生死を問わず、絶滅のおそれのある種の個体、及び(2)それら個体の部分や派生物であって、容易に識別できるもの、です。
 附属書Iは、特に絶滅のおそれが高いもので、取引により影響を受ける種を掲載しています(約950種)。これらの種については原則として国際取引が禁止され、学術研究などのための輸出入には、輸出入国双方の許可が必要となります。
 附属書IIは、現在は必ずしも絶滅のおそれはないが、取引に厳重な規制がなければ絶滅のおそれのある種を掲載しています(3万3000種)。附属書IIIは、締約国が自国領域内で規制が必要であると認め、かつ取引規制のために他の締約国の協力が必要と認める種を掲載しています。附属書II及び附属書IIIに記載の種については、原則として国際取引可能ですが、輸出許可書を輸出国当局及び輸入 国当局に提出する必要があります。したがって、附属書II及び附属書IIIに列記された種についても、輸出許可書がなければ税関で差し止められることになります。

 過去に日本の税関で実際に輸入を差し止められたものには、以下のようなものがあります。
・漢方薬・塗り薬・酒類
 クマの胆のう、トラ、ジャコウシカ、コブラなどの成分を含んだもの
・はく製等
 ワニ、ヘビ、トカゲなどの革を使用したハンドバッグ、財布、ヘビ革を使用した胡弓等
・その他の製品
 象牙の印材・彫刻品、べっこう製品、クジャクの羽、サンゴ、ダチョウの卵等
・植物
 サボテン、ラン、トウダイグサ、ソテツ、アロエ等

 野生生物の国際取引は、年間1億米ドルのビッグビジネスであり、うち約3割は違法な取引です。野生生物を大量輸入している日本にとって、ワシントン条約の国内実施、そしてその実効性の確保は生物の多様性確保のために非常に重要な
問題です。

環境の小窓(17)〜風力発電所等の視察〜

執筆者:木野達夫 弁護士

 平成27年6月12日〜13日、高知県大月町にある大月ウインドファーム(風力発電施設)の視察に行ってきました。
 近畿弁護士会連合会公害環境委員会の夏期研修会の準備のための視察です。
 1日目、高知空港から車を3時間走らせて大月ウインドファームに着きました。
 大月ウインドファームは株式会社大月ウインドパワーが所有する風力発電施設で、1機1000KWの風力発電機を山の尾根伝いに12機並べています。
 民間の企業と町おこしを真剣に考える有志の方達が数々の困難を乗り越えて実現した事業です。
 風車はコンピュータ制御されており、風の吹いてくる方向へ羽を向け、風の強さによって羽の角度を変えます(風が強すぎるときは安全のため羽を立てて風を受けにくくします)。
風力発電機を真下から見上げたのは今回が初めてでした。
 2日目は、小水力発電所予定地を視察しました。事業者である地域小水力発電株式会社の担当者に案内してもらい現地に行きました。
 着工はされていませんでしたが、清流が勢いよく流れ出る貯水池の建設予定地と高低差を利用して発電するための発電設備予定地を教えてもらいました。
 今回の視察では、風力発電も小水力発電も、開発する土地の問題(名義人が不明である、地権者との交渉が難航など)の解決が大変であることを学びました。

環境の小窓(16)〜バイオマスツアー真庭〜

執筆者:大田悠記 弁護士

 平成26(2014)年11月21日・22日の2日間、岡山県真庭市で開催されている「バイオマスツアー真庭」に、公害対策・環境保全委員会の委員6名で参加してきました。
 真庭市は、平成17(2005)年、9町村の合併により誕生し、人口は約5万人、岡山県の北部に位置し、市内の森林面積が約79%を占める森林資源の豊富な林業・木材業のまちです(市内には、西日本屈指の温泉地の一つである湯原
温泉もあります)。
 真庭地域では、平成12(2000)年の時点で、年間7万8000トンもの木質副産物(木くず、廃材など)が発生していました。そこで、それらの副産物を有効活用できるよう、林業・木材産業と周辺産業が連携し、木質資源の循環系を創り出すことを目指した取組みがなされるようになりました(木質資源活用産業クラスター構想)。
 その後、平成18(2006)年には、国からバイオマスタウンの認定を受け、木質バイオマスの活用に向けた実験・取組みが重ねられてきました。その成果として、現在では、木質副産物を集積基地に集めて効率よく収集し、それをチップやペレットなど用途別に加工し、ボイラーや発電のエネルギーとして利用するという木質バイオマスの流通体制が構築されるようになりました。これにより、年間1万6000キロリットル(約14億円分)もの石油代替エネルギーを創り出すことができ、CO2の大幅な削減にも成功しています。
 真庭市のバイオマスは、あくまで真庭の地域にもともと根付いていた林業・木材業を復活・強化しようとして始められたものです。バイオマスの活動が地域の産業を盛り上げ、ツアーなどの形で観光面でも波及効果を及ぼしている点は、注目すべき点です。
 地域内でエネルギーを創り出し循環させていく「バイオマスタウン真庭市」は、21世紀の持続可能な産業地域の一つのモデルとして、大いに参考にすべきものといえるでしょう。

環境の小窓(15)〜東北地方の防潮堤問題について〜

執筆者:永井光弘 弁護士

 東日本大震災の巨大津波をうけて、東北地方では防潮堤が建築されつつある。
 中央防災会議の方針は、東日本と同様の最大クラスの津波(1000年に一度;L2)については高台移転等の土地利用も含めた総合対策を行い、他方でより頻度の高い津波(数十年から百数十年に一度;L1)に対しては基本的に防潮堤で対応するという考え方を示した。
 後者L1津波への対応として、東北地方では従来のものより相当に高い防潮堤の建築が計画されている(気仙沼中島海岸では14.7mもの防潮堤!)。大きな問題は、既存の防潮堤が存在したところでは災害復旧事業として、そうでないところは海岸法に基づいて、それぞれ防潮堤が建築されるが、いずれにしても環境影響評価法の対象ではないという点だ。沿岸域はもともとデリケートな生態系であり、そこに巨大な防潮堤ができることは環境への大きなインパクトは避けられず、まず環境影響評価を行うことは不可欠だと思う。
 また、防潮堤の建設手続においてはそこに住む住民の民意が十分に反映される手続きがない。津波被災後の状況を受けて、まずは、そこでどのようなまちづくりをするかが十分議論されるべきであり、その後、そのためにはどの程度の防潮堤を必要とされるのかが議論されるべきだ。そうでないと、巨大な防潮堤は完成したものの、それで守られるべき後背地に住む人はいなかった、というちぐはぐなまちづくりとなってしまう。
 私は2012年に日弁連の調査でイギリスの沿岸政策を視察した。そこでは、限られた財政のもとでは全ての海岸線を防護することは不可能との政策判断のもと、沿岸住民にどの海岸線を防護するか徹底的に議論して決めてもらうという政策がとられていた(地域住民の議論で守らないと決めた北海沿いのヘイズバラでは民家がまさに海に沈んでいるところも目の当たりにした)。
 そこまで極端でなくても、東北地方でも海岸防護をどうするかは基本的にそこに住む住民に決めてもらうべきであって、防護の方法を防潮堤のみに限るべきではない。高台移転や避難施設の充実に十分な復興費用をつかい、(1000年に一度のL2津波にはそもそも対応できない)防潮堤にたよらず、子孫に対し海が見える豊かな海岸を残すという選択肢もあるはずだ。

環境の小窓(14)〜湖をながめながら〜

執筆者:亀若浩幸 弁護士

 夏になると、子供たちを連れて琵琶湖の畔でキャンプをしています。
 琵琶湖で、泳いだり、魚や昆虫を捕って遊び、湖畔で飯ごう炊さんをして、夜は湖の波を音を聞きながらテントの中で眠ります。昼間は、山々の緑や野鳥を、夜には星空を眺めながら、自然の心地よさを堪能できます。
 琵琶湖の四方の山々ではいくつもの清流が生まれ琵琶湖に注ぎ続けています。琵琶湖は、その流れをしっかりため込んだ巨大な水瓶です。琵琶湖に流れ込む川はいくつもありますが、流れ出す川は、瀬田川ただ一つです。流れ出た水は、淀川を流れ、大阪湾に注いでいます。私たちは、その流れの中から浄水を作り、神戸の町中までパイプを引いて飲み水を確保しています。
 阪神・淡路大震災の際、私たちは、阪神間の水道水がどれほど淀川の水に頼っているかを知らされました。私たちの飲み水の多くは琵琶湖が源なのです。
 琵琶湖のすぐ北側には、たくさんの原子力発電所があります。万が一、福島県の様な事故が起き、放射性物質が放出されれば、私たちの水瓶はあっという間に放射能に汚染され、我々の飲み水もたちまち汚染されてしまう運命にあります。
 自然環境を守るということは、私たちの命や健康を守ることなのです。

環境の小窓(13)〜IPCC横浜会議について〜

執筆者:木野達夫 弁護士

 3月25日より横浜で開催されていたIPCC(気候変動に関する政府間パネル)の会議が3月31日に閉幕し、地球温暖化の「影響と適応」に関する報告書が発表されました。
 報道によりますと、報告書では、温度上昇についての複数のシナリオに基づいて社会が受ける影響と対策について報告がなされたとのことです。
 20世紀末に比べて気温が2度上昇すると、各地域の農作物の生産や水資源などに影響を与える、3度上昇すると、生物多様性が広範囲で損なわれる、4度以上の上昇なら世界レベルで主食の栽培が難しくなり、貧困を悪化させ、紛争などにつながりかねない、などと分析されているそうです。
 また、今後十分な対策を取っても気温は上がり続け、2030年頃には1900年比で1度以上上昇するとしています。
 なお、IPCCは、気候変動をもたらす原因となる二酸化炭素などの排出増加に加えて、途上国の人口増や先進国の少子高齢化現象なども検証に反映させているそうです。
 温暖化の問題は、二酸化炭素などの排出だけでなく、貧困問題や人口問題など、人類が抱える大きな難題も絡む複雑な問題のようです。
 これからも研究の推移を注意深く見守っていく必要がありそうです。
 このような複雑な問題に対する答えは簡単に出るものではないと思いますが、一人一人が関心を持ち続けることが大切ではないでしょうか。

環境の小窓(12)〜日本の森について〜

執筆者:森 崇志 弁護士

 突然ですが、「森」と「林」の違い、ご存じですか。
 辞書などでは生えている木の多さの違いとされていたりもしますが、林業の世界では、自然に生えているのが「森」、人の手が入っているのが「林」だそうです。
 日本には多くの森林が存在し、日本の森林は国土の約66%を占め、森林面積のうち約40%(国土の約27%)は人工林だそうです。戦後の拡大造林政策のもと、多くの山で植林がなされ、60年経過した現在では、山には緑が生い茂り、綺麗な風景の一部となっています。
 しかし、戦後に植林された木は、木材価格の下落などの影響を受け、人の手が入らなくなり、間伐が十分になされなかった結果、木の上部あたりにしか枝葉はなく、また、木1本1本ももやしのようなやせ細った木となってしまっています。森林は、土砂災害防止機能や水源かん養機能など、私たちの生活にとっても欠かせない存在となっていますが、その森林がやせ細っていけば、森林の有する機能の低下を招き、ひいては私たちの生活も脅かされることになるかも知れません。
 最近、森林・林業について議論されるようになってきましたが、単に木を間伐すれば解決できることではなく、間伐した木をどのように搬出するのか、さらに、搬出した木をどのように利用するのか、など、様々な問題を解決していかなければなりません。問題の解決には、森林自体の再生が第一ですが、FSC認証(※1)を受けた製品などを選択することで森林保全、再生に貢献することも出来たりします。スターバックスの袋もFSC認証を受けているなど、FSC認証の商品は他にもいろいろとあるみたいですので、また探してみてください。
(※1)FSC認証とは、FSC(森林管理協議会)が、適切な森林管理が行われているか、適切な管理が行われている森林からの資源で製品がつくられているかどうかなどの基準から製品等を審査し、基準をクリアした製品等に対して認証するという制度です。認証取得者は、FSCロゴマークを製品等に使用出来るようになります。

環境の小窓(11)〜被災地での田んぼの復興〜

執筆者:小沢秀造 弁護士

 最近湿地保全の集会に参加しました。田を湿地として位置付けることは、ラムサール会議、生物多様性会議でなされています。
  ふゆみずたんぼと言いまして、冬に田に水をはることによって、渡り鳥などが餌をとる場などにいかし、有機農業などをするすばらしい実績のある運動が有名です。
 東北の震災で田んぼが塩を残してしまいました。そのままでは生物が育ちません。除塩のために化学物質をつかったり、土壌の大幅な入れ替えを行うと、土壌の性質や周辺の生態系に大きく影響があるという問題意識があります。そこで、水をはることによって塩を作土層より深く押し下げることができました。宮城県、岩手県などで複数個所で田んぼの復興が成功したようです。私も参加しましたが、日弁連でも2002年バレンシア第8回ラムサール会議の際訪問したスペインのエブロデルタで実績があります。
 最初は、表層の小さなガラスを取り除く作業から始まり、多くのボランティアも活躍しているそうです。ボランティアの助けを借りて東北大学、NPO田んぼによる継続的なモリタニングがなされています。
 すばらしい取り組みだと思います。

環境の小窓(10)〜広がるアスベスト被害〜

執筆者:伊藤明子 弁護士

 2013年12月25日、大阪高裁は、泉南アスベスト国賠2陣訴訟において、3度目の原告勝訴判決を言い渡しました。大阪・泉南地域は、100年にわたるアスベスト産業の集積地であり、戦前から現在まで深刻な被害が続いています。判決は、実に55年も前の1958年から95年まで、約38年間にわたる国の不作為責任を認めました。
 国は、抽象的な規制や一片の通達を出して事足れりとするのではなく、採った措置が実際に健康被害を防止する効果を上げているかどうかを絶えず検証しなければならない。不十分であればその時々の最新の知見に基づいて健康被害を防止すべく、速やかに新たな規制を行わなければならない。判決は、こうした当たり前のことを指摘しています。アスベスト被害に限らず、国民の命や健康に関わる行政全般について言えることではないでしょうか。
 2005年6月のいわゆるクボタショックから9年近くが経過し、アスベスト問題は既に解決済みと思われている方もいるかもしれません。
 しかし、アスベストによる病気は、今やわが国最大の職業病であり、毎年1000人以上が労災等の行政認定を受けています。ばく露から発症まで20〜50年もの長い潜伏期間があるうえ、アスベストが様々な産業で広く用いられていることから、今後ますます被害者が増えることが予想されています。
 また、日本に輸入された約1000万トンのアスベストの多くは建材に利用されており、建物の解体に伴う新たなアスベストばく露も懸念されています。昨年3月には大気汚染防止法が改正され、建物解体時のアスベスト飛散防止対策が強化されましたが、現実にはずさんな手抜き工事も報道されています。
さらに、阪神・淡路大震災から19年が経過し、震災がれきの処理にあたった方のアスベスト被害も明らかになりつつあり ます。東日本大震災では放射線被害が注目されがちですが、「静かな時限爆弾」であるアスベスト被害の教訓を活かすことも重要と思われます。
 参考:日弁連「大阪・泉南アスベスト国家賠償請求第2陣訴訟大阪高等裁判所判決に関する会長声明」http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2013/131225_2.html

環境の小窓(9)〜ジュゴンと辺野古埋め立て〜

執筆者:永井光弘 弁護士

 ジュゴン(DUGONG)という生き物を知っていますか?
 成長したジュゴンは、体長3m、体重400sぐらいになります。インド洋や太平洋西部の熱帯沿岸域に生息しており、沖縄本島はその生息域の北限にあたります。マナティーと似ていますが、ジュゴンはしっぽがイルカのように三日月形で、海にしか住めません。生態について詳しくわかっていませんが、親戚のマナティーとおなじくらいだとすればその寿命は約70年、人間と同じくらいです。
 名前の由来はいろいろな説がありますが、DUYUNG(インドネシア語;きれいなお姉さん)、儒良(中国語)と言われています。なお、沖縄本島では「ざん」(犀魚)と呼ばれています。
 文化財保護法では天然記念物に指定され、環境省レッドデーターブック絶滅危惧1A類、国際自然保護連合(IUCN)レッドデータブックでも「危急種」に分類されています。
 その昔、海の生き物は住み場所を求め、陸に上がって生活を始めました。ジュゴンは、いったん陸に上がってからもう一度海に戻って生活することにした生き物です。だから、食べ物もワカメなどのいわゆる海藻ではなくて、(ジュゴンと同じように)陸から海に住処を移した「海草」なのです(リュウキュウスガモなど)。
日本では、わずかに一頭だけ、鳥羽水族館で飼育されており、会うことができます(世界の水族館でも飼育例は4例ほど)。沖縄本島付近のジュゴンはわずか3頭しか生息が確認されていません。
 さて、政府は普天間基地の代替の米軍基地を作るため、沖縄名護市の東海岸側にある辺野古岬及び大浦湾を埋め立てようとしています。
  埋め立て予定地には、ジュゴンのえさとなる「海草」が豊富で、ジュゴンの食み跡も多く観察されることからジュゴンの保全のうえで最も重要な海域です。また、湿地としてみても埋め立て予定地は環境省が平成13年に選定した日本の湿地500に2つも該当しており、また、沖縄県の「自然環境の保全に関する指針」で自然環境の厳正な保護を図る区域とされている、重要な湿地です。
 辺野古埋め立てに関する環境アセスメントにおいても3500通を超える意見が寄せられ、多くが埋め立て反対の意見だったようです。
 今年の末頃には、名護市の意見が表明され、これも受けて来年初めには沖縄県の意見が埋め立てに「同意」するか否かが明らかになります。沖縄県は基本的には普天間の県内移設に反対しており、環境アセスも厳しめに行っていますが政治判断でどうなるかわかりません。
 しかし、ジュゴンが生息できる豊かな海を守ることは、沖縄県のみならず日本国民の利益になるものですから、沖縄県の判断に注目したいと思います。

環境の小窓(8)〜都市環境について〜

執筆者:木野達夫 弁護士

 環境といっても様々なものがあります。
 一般的に思いつくのは「自然環境」ですね。美しい山、川、海、多様な生態系、できることなら最大限守りたいものですね。
 このように環境というと、一般的には「自然環境」のことを思い浮かべますよね。
 しかし、環境には、自然環境の他にも、「都市環境」「職場環境」「家庭環境」などいろいろなものがあります。
 自然環境を守りたいという気持ちは、ほとんどの方がお持ちだと思います。では、「都市環境」はどうでしょうか?
 一口に都市環境といっても様々ですが、例えば、町並みの美しさ、家の窓から見える風景、というような美観に関するものや、歩道や自転車道が整備されていて歩行者や自転車に優しい、というのも都市環境といえるでしょう。
 このような「都市環境」については、多くの人は日常生活において、「守りたい」と意識していないかもしれませんね。
 一度、みなさまの町をじっくりと眺めてみてはいかがでしょうか。守りたい「都市環境」が見えてくるかもしれませんよ。

環境の小窓(7)〜日弁連「電磁波問題に関する意見書」について〜

執筆者:伊藤明子 弁護士

 2011年5月にIARC(国際がん研究機関)が、携帯電話から発せられる電磁波等が含まれる高周波の発がん性リスクを2Bとランク付けしたこと等を受け、電磁波の健康被害に関する国民の関心が高まっています。
 携帯電話や電子レンジなどから出る電磁波は、私たちの身の回りに溢れていますが、その健康影響はまだ詳しくわかっていません。ただ、電磁波と一定の疾患との関連性を指摘する多くの研究や報告があること、また、電磁波過敏症と呼ばれる症状に苦しんでいる人々がいることは事実です。さらに、日本の電磁波の基準値よりもはるかに厳しい基準値をとっている国々があり、日本が準拠する基準が緩すぎると指摘する欧州議会の決議等が存在することも事実です。
 こうした中、日本弁護士連合会は、2012年10月、「電磁波問題に関する意見書」をとりまとめ、総務、経済産業、環境、厚生労働の各大臣に提出しました。
 意見書では、予防原則に基づいて幼稚園、小学校、病院などがある地域では他の地域より厳しい基準を設けること、携帯電話中継基地局などを新設する場合、住民に説明し協議する制度の実現、基地局の位置情報の公開等のほか、電磁波の健康被害に関する公正な研究を進めること、高圧電線、基地局周辺の住民の健康被害や職業曝露と健康被害についての実態調査、電磁波過敏症対策として、人権保障の観点から公共施設や公共交通機関にオフエリアをつくること等の検討を求めています。
 今後も、私たちの身の回りの電磁波は増え続けるでしょう。しかし、便利さを優先し、危険性を軽視したツケが、取り返しのつかない健康被害となって現れる場合があることを、私たちは水俣病やアスベスト問題から学んでいるはずです。手遅れになる前に、予防原則の観点から、今できること、今やっておくべきことを、一緒に考えてみませんか。
*日弁連「電磁波問題に関する意見書」はこちらから*
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/opinion/year/2012/120913_4.html

環境の小窓(6)〜まとめておこう放射能〜

執筆者:永井光弘 弁護士

 放射能についてはいろんな単位が出てきます。代表的なものがシーベルトとベクレルです。今回は、まず、シーベルトについてまとめておきましょう。
 ベクレルは「放射能を出す能力」を示す単位です。これに対して、シーベルトは、「放射能の人体への影響」を示す単位です。
  さて、今回はまず、外部被曝(放射能が外から飛んできて皮膚などにあたる状態)に関してまとめていきます。いろいろ意見はありますが、この段階ではICRP(国際放射線防護委員会;注1)の見解(2007年勧告)を前提とします。
 まず、ICRPは一般の人が浴びても差し支えない1年間の被曝の基準を1ミリシーベルトとされます。
  また、よく引用されるのが、年間100ミリシーベルトであり、これを超えるとガンのリスクが0.5%上昇するとされます。その他の人体に対する影響と数値は、下記の表1を見てください。
  では、外部被曝が100ミリシーベルト以下ではどうなのでしょうか?浴びて差し支えない量が年間1ミリシーベルトなのですから、当然に1を超え100ミリシーベルトまでの間はどうなんだという疑問が出ます。「低線量被曝」の問題です。実は、研究者の中でも意見が分かれ、ガンのリスクが上がるというはっきりした証拠はありません。
 しかし、IPCPは「必要のない放射能はできるだけ浴びない方が良い」という考えに基づいて、100ミリシーベルト以下でも被曝量に応じてガンの確率が上がっていくという仮説を採っています(しきい値なし仮説=LNT仮説)。
  ただ、ICRPは、平時の基準こそ年間1ミリシーベルトとしますが、緊急時(原発事故とかを想定)には、被曝量が年間20〜100ミリシーベルトの範囲にとどまるように対策を講じるべきだとし、事故からの復旧期は20ミリシーベルト以下にとどめるべきだとしています。
 これを受けて、日本の原子力安全委員会が作成した「原子力施設等の防災対策について」では、全身に50ミリシーベルト以上被曝する場合は「コンクリート建屋の屋内に退避するか、または避難すること」、10〜50ミリシーベルトの場合は「屋内退避」すること、と定めています。ちなみに、これは放射性物質の雲(プルーム)が通り過ぎるまでの一時的措置で、例えばIAEAでは「避難」は7日間、「屋内退避」は2日間しか想定していないことに注意すべきです。
 そこで、政府は、4月22日に年20ミリシーベルトを超えるおそれのある区域を「計画的避難区域」と指定し、住民に避難を求めています。
 なお、テレビを見ていると、放射能の単位として、一時間あたりの被曝量の計測をしている場合が多いです。
 本来なら、20ミリシーベルトを前提とすると、
 20ミリシーベルト(年間)÷365(日)÷24(時間)=0.00228ミリシーベルト(※1ミリシーベルトは1000マイクロシーベルトだから2.28マイクロシーベルト)となりそうです。
 しかし、政府の計算では、屋外8時間・屋内16時間とし、屋内の被曝量は屋外の0.4倍という操作を経て(1日を14.4時間として)、年間20ミリシーベルトを前提としながらもこれに対応するのは毎時3.8マイクロシーベルトという基準を出しています。
  政府の計算でいっても3.8マイクロシーベルト毎時は、年間20ミリシーベルトに相当すると覚えておくべきでしょう。
  次回は、論争の多い内部被曝の問題を取りあげます。
                                                                              
【表1】
外部被曝量(左)に対する人体への影響(右)
 100ミリシーベルト ・・・ 精巣に影響、一時的不妊
 300ミリシーベルト ・・・ 胎児に重篤な精神遅滞
6000ミリシーベルト ・・・ 精巣に影響、永久不妊
7000ミリシーベルト ・・・ 致死                   │                     

【注1】
ICRP(国際放射線防護委員会)とは
  放射線に関する専門家でつくる政府とは独立した非営利組織。その勧告は、この分野では最も権威あるものとされ、WHO(世界保健機関)、IAEA(国際原子力機関)等の国際機関も基準作りの参考としている。

参考資料;「緊急解説 福島第一原発事故と放射線」(NHK出版新書)
     「原発と放射能 緊急特集第2弾」(ニュートン2011年7月号)

環境の小窓(5)〜遠くて近い、温暖化問題〜

執筆者:森 崇志 弁護士

 2010年の漢字は「暑」でした。
 記録的な猛暑が続き、熱中症で倒れる人が続出し、異常気象が叫ばれました。
 しかし、この温暖化は、科学者による国際的な研究によって、人為的な温室効果ガス(主に二酸化炭素)によって引き起こされていることはほぼ明らかとなりました。
 そして、今後も現在と同じように、経済発展重視の社会で進んでいくと、21世紀末には最大で6.4度の平均気温上昇が引き起こされるそうです。
 地球温暖化問題は、これまでの公害問題と異なり、私たちは被害者でもあり、加害者でもあります。そして、今生きている人だけでなく、将来生まれてくる子ども達にも関連する問題です。
 地球温暖化問題解決のために、大規模排出源はさらなる削減を進めていかなければならないことはもちろんですが、私たちも身近なことから取り組んでいく必要があります。
 将来生まれてくる子ども達のためにも、今から始めませんか?

環境の小窓(4)〜じゃがバター塩辛つき〜

執筆者:伊東香保 弁護士

 仕事と観光を兼ねて、札幌プリンスホテルに3泊した。
 ここでのエコ活動を紹介する。
 その1。シーツやタオルの取り替えをしないと1泊につき500円の商品券(ホテル内でのみ通用)を提供する。多くの宿泊施設で、「交換しなくていい」といえば翌日も再使用する制度を採用しているが、対価が頂けるというのは初めてであった。そこで、じゃがいも大好き人間の私は貰った金券でじゃがいものスープを買った。
 その2。ペットボトル等の資源ゴミとその他のゴミの分別は当然としても、「キャップ」だけを別途集めており、テーブルの上の印刷物の上に載せておくようにとの指示である。
 神戸市中央区では「キャップ」は燃えないゴミに分別されている。ところが「キャップ」を集めて車椅子に替えた話などを見聞きするので、かねてよりこれも資源ゴミなのにな、と思っていた私は喜んで協力した。とはいえペットボトル自体も再使用したので結局溜まった「キャップ」はふたりで5〜6個だけだった。
少しずつではあるが、世の中は変わっているようだ。
 それにしても「すすきの」の高級料亭?で食べた「じゃがバター塩辛つき」は、おいしかったなぁ。

環境の小窓(3)〜路面電車〜

執筆者:佐伯雄三 弁護士

最近、かって神戸市街地を縦横に走っていた神戸市電の本を見た。
神戸市内に市電が走っていたことは私の年代のものは知っているが、神戸は坂の多い町にもかかわらず、東西方向を中心に市電(15系統も)が走っていたのである。裁判所と湊川神社の間のあの道にも市電が走っていた。
しかし、昭和46年3月に神戸市内からは市電は姿を消した。
かって大都市では一斉に自動車走行のじゃまになるとして撤去されてしまった。
そのツケを今、払わされようとしているのではないか。
市電のような路面電車は、今、環境にやさしい乗り物として全世界的に注目を集めている。
新しい乗り物として路面電車を誘致しようという動きもある。
単に公共事業投資という観点ではいただけないが、自動車に代替できるなら、環境の面でも寄与が期待できる。
世界各地には美しい路面電車が走っている。
私が一番好きなのはフランス、ストラスブールの路面電車(LRTという)である。
無駄な公共事業としてではなく、市民の足、弱者の足として地域交通をになえる路面電車の再登場は夢なのだろうか。

環境の小窓(2)〜生物多様性〜

執筆者:小沢秀造 弁護士

今年10月名古屋市において、生物多様性条約第10回締約国会議が開催されます。
 一昔前まで、自然保護、開発反対の根拠として貴重な動植物が生存し、その生存が危機にさらされるからという理由が多くの人を引きつけてきたと思います。
1993年に生物多様性条約が発効しました。
最近は貴重な動植物の生存を含めた生物多様性という考えかたが脚光を浴びています。
 兵庫県では豊岡の「コウノトリ育む農業」が注目を集めています。
減農薬、無農薬で、安全・安心なお米の生産と多様な生き物を同時に育むというものです。農協、NGO、行政が連携しうまくいっている例として、平成22年版環境白書にも取り上げられています。
 景観権は裁判所で認める法的な概念になっていますが、生物多様性も今後、開発に反対する際の有力は法的な概念になることが期待されます。

環境の小窓(1)〜あなたは、私は、大丈夫?−アスベストは「静かな時限爆弾」〜

執筆者:伊藤明子 弁護士

日本では、1960〜90年代にかけて1,000万トンを超えるアスベストが輸入され、3000種類もの用途に使用されてきました。建物の耐火被覆としての吹き付け石綿、天井材などの建材のほか、水道管や自動車ブレーキ…身近なところでは、魚焼きの網やトースター、ヘアドライヤーなどにも使われていました。
学校教員や文具店経営者、パン職人、杜氏など、一見アスベストとは何の関係もなさそうな人もアスベストの病気で亡くなっています。
 知らないうちに吸い込んだ後、何十年も経ってから恐ろしい病気を発症するのが「静かな時限爆弾」アスベストの被害なのです。
 アスベストを使った建物の解体は2020年〜40年にピークを迎えますが、解体時に作業者や周辺住民などの新たなアスベスト曝露の可能性があると言われています。
中皮腫による死亡者数は、今後40年間で10万人に達するとも予想されています。
史上最大の労災・公害と言われるアスベスト被害は、あなたにとっても、思いの外、身近な問題です。
アスベスト被害の根絶は、国民みんなの課題なのです。

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兵庫県弁護士会