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2026年

自宅の一部が他人の土地、名義変更は可能?-「取得時効」該当の可能性も

 神戸新聞2026年4月1日掲載
執筆者:星野拓哉 弁護士

 30年以上住んでいる自宅の一部が、他人の土地の上にあることがわかりました。登記簿を確認しましたが、全く知らない人で困っています。今後に備えて、土地を自分名義にしたいのですが、どうすればよいでしょうか。

 他人名義の土地を長期にわたり自分の土地と思いこんで利用していた場合、「取得時効」という制度により、名義を自分に変更できる可能性があります(民法162条)。

 これにはまず、土地所有者に対して時効を使うという意思を伝える必要があります。これを時効援用の意思表示といいます。登記簿上の所有者が全く知らない人の場合、登記簿や戸籍、住民票などから、現在の所有者を調査し、時効援用の意思表示をした上で、任意の協力を求めるか、訴訟によって、土地の名義を自分に変更することができます。

 調査をしても現在の所有者の住所がわからない場合には、公示送達という手続きにより訴訟を提起します。公示送達とは、裁判所に一定期間の掲示をすることで書類が届いたものとみなす制度です。要件は厳しいですが、住所が不明なときでも訴訟手続きを進めることができます。

 また登記簿の記載が不完全で、所有者や住所を調べる手掛かりが一切ない場合は、「所有者不明土地(建物)管理制度」(民法264条の2~8)が利用できます。これは2023年に始まった新しい制度です。利害関係人からの申し立てにより、裁判所が所有者の不明な土地や建物について、必要に応じて「所有者不明土地(建物)管理人」を選任するというものです。管理人は、対象の土地や建物の手入れをしたり、裁判所の許可を得て売却するなどの処分をしたりします。所有者やその住所が不明な土地を時効により取得したい場合も、管理人に対して、登記の変更(所有者の変更)手続きをおこないます。

 本件は、取得時効が成立しているかどうかの判断、土地所有者の調査、所有者不明土地管理命令申し立てのそれぞれについて、専門的な知識が必要となりますので、弁護士にご相談されることをお勧めします。