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書面で決めた養育費 元夫が支払わない-民法改正 強制執行可能に

 神戸新聞2025年6月18日掲載
執筆者:谷村 巴菜 弁護士

元夫から養育費が支払われなくなりました。一応書面での取り決めがあるのですが、もともと信用できない人だったので、諦めた方が良いのでしょうか。

養育費の不払いは、子どもの生活や教育に大きな支障を来し、社会的にも深刻な問題となっています。原因として、支払い義務がある一方、強制力(法的手続きで強制的に支払わせること)が弱いことが挙げられます。

この問題を解決するために、民法が改正され、養育費に「先取(さきどり)特権」という優先的に支払われる権利が付与されることになりました。改正法は、2026年5月までに施行され、養育費の支払い確保の実効性が高まるのではないかと期待されます。

これまでの民法では、養育費について父母間での取り決めだけでは、養育費の支払いを怠ったときに財産を差し押さえる(「強制執行」といいます)ことができず、公証役場で作成する公正証書や、裁判所での手続きを経て得られる調停調書、審判書、判決書といった「債務名義」が必要でした。

しかし、養育費に「先取特権」が付与されることによって、「債務名義」がなくても、養育費について父母間で取り決めた文書さえあれば、これに基づいて、養育費を支払うべき別居親の給料や財産を差し押さえる手続き(強制執行)を申し立てることができるようになるのです。

この法律は施行を待っている段階です。しかし、養育費について既に書面で取り決めている場合、法施行後に発生する養育費に関しては、不払いがあった際に強制執行が可能になります。

現時点で取れる手段ですが、養育費について取り決めているケースは、民事訴訟(裁判)において未払い分(場合によっては将来分も)を請求することができます。まだ取り決めていない場合は、裁判手続きの家事調停や審判を申立てて、養育費を取り決めるところからスタートしましょう。

養育費の不払いは、極めて身勝手で悪質な行為です。子どものために諦めず、適切な手続きを取ってください。施行後も、強制執行の申し立てを行う必要があります。法的手続きが必要ですので、弁護士にご相談されることをお勧めします。

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