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2025年

既婚告げずに独身女性と交際 責任どうなる-配偶者と相手への慰謝料など

 神戸新聞2025年8月20日掲載
執筆者:井上 界 弁護士

既婚者にもかかわらず、マッチングアプリで知り合った独身の女性と性交渉の末、あいまいな関係が続いていました。ある日、その女性に問い詰められて既婚者だと打ち明けました。私の責任などはどうなるのでしょうか。

 アプリなどでの出会いには、利用目的、利用者の属性、身元が分かりにくいといった特性があるため、事例のようなトラブルは男女ともに増えてきました。

 既婚者が、配偶者でない異性と性的関係や交際したからといって、犯罪にはなりませんので、刑罰はありません。

 しかし、民事上の責任として、①配偶者に対する責任②相手の異性(不貞相手)に対する慰謝料の支払義務など-が生じます。

 まず、①配偶者に対する責任としては、不貞したこと自体の慰謝料として賠償責任が生じます。そして、不貞が原因で離婚にまで至ったときは離婚の慰謝料を含めて賠償額は高額になりがちです。なお、不貞は法律上の離婚原因(民法770条1項1号)ですから、配偶者があなたの不貞をきっかけに離婚を決意した場合は、裁判でも離婚が認められることを覚悟しましょう。

 次に、②不貞相手に対する損害賠償責任としての慰謝料の額は、関係の深度によってさまざまです。婚姻に準じるほどの関係(重婚的内縁)、婚約、交際、互いに婚姻や婚約は全く考えない性交渉をするだけの関係-などが考えられます。

 相談者としては、「あいまいな関係」ということですが、不貞相手から「問い詰められた」のであれば、きっと相手の女性はあなたを未婚だと思って、もしかしたら婚姻も考えて真剣に交際していたと考えられます。この場合、この女性が、あなたが既婚者だと知らなかったときは、通常この女性の「貞操権侵害」あるいは「性的自己決定」を侵害したものとして、あなたには慰謝料を支払う責任が生じる可能性は高いです。

 結婚しようとほのめかしたり、妊娠中絶をさせていたりしたときは、慰謝料は高額になるでしょう。人の気持ちを踏みにじる行為の代償は大きいのです。

 相手の女性から慰謝料請求をされたり、妻から離婚を迫られたりするなど、トラブルになったら弁護士に詳細を相談することをお勧めします。

 

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