神戸新聞2026年2月4日掲載
執筆者:實安 貴之 弁護士
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先日亡くなった母は生前、遺産の全てをいとこに遺贈するという内容の遺言書を作成しましたが、この遺言書を作った後、子の私に遺産を全て譲ると約束しました。私は遺産を受け取ることができるのでしょうか。
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お母さまがあなたに遺産を譲るという内容の新しい遺言書を書いていたり、先の遺言書を破棄していたりすれば、いとこに遺贈するという内容の遺言は無効になります。まずはその点を確認しましょう。
これらが確認できない場合、「遺言後の生前処分」(民法1023条2項)によって、いとこに財産を遺贈する旨の遺言が撤回されたか検討しなければなりません。遺言書の撤回が争いとなるときは、あなたが遺産を受け取ることは困難を伴います。以下に詳しく説明します。
民法1023条1項および同条2項は、遺言が遺言後の生前処分やその他の法律行為と抵触する場合、遺言が撤回されたものとみなす、と規定しています。
お母さまが、遺言書の作成後にあなたに財産を全て譲ると話し、あなたが承諾したのであれば、贈与契約や死因贈与契約などの締結によって「遺言後の生前処分」がされたとみることができます。
このような「遺言後の生前処分」は、先の遺言書の内容と抵触すると考えられます。そして、死因贈与契約が締結された場合、お母さまの逝去で契約の条件が成就します。
この贈与契約などの締結の立証方法(証拠)として、お母さまとあなたが署名し、実印による押印をした契約書などが考えられます。契約書がない場合、例えば、手紙やメールのやりとり、SNS(交流サイト)の投稿、銀行などに遺言書変更のメモが預けられていないか、不動産については、死因贈与契約の仮登記がなされているかどうかなど、「遺言後の生前処分」を示す資料が残っていないかを確認する必要があります。
これらの資料が残っている場合は、「遺言後の生前処分」があったことを立証できる可能性があり、あなたが遺産を受け取ることができる余地があります。
しかし、これらの資料が残っておらず、口頭で贈与契約などを締結したのみであれば、「遺言後の生前処分」を立証することは不可能であり、遺産を受け取ることはできないでしょう。


